彼女がその名を知らない鳥たち
幻冬舎文庫
沼田まほかる
2009年10月31日
幻冬舎
754円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、淋しさから十五歳上の男・陣治と暮らし始める。下品で、貧相で、地位もお金もない陣治。彼を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。そんな二人の暮らしを刑事の訪問が脅かす。「黒崎が行方不明だ」と知らされた十和子は、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑い始めるが…。衝撃の長編ミステリ。
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(無題)
みっともない男と、みっともない女が、絶望の中で救いようもなく傷つけ合う。その日常を延々とリアリティを持って模写してゆく。著者はそこにどんなメッセージを込めているのか。読み終わるまで、この疑問は解けなかった。それは、単純に不愉快な人物が描かれているというだけじゃなく、巧妙な物語の構成によってもたらされる効果だ。「素晴らしい人」は彼女の遠くにいて「最低な人」は近くにいる。遠くにいる「素晴らしい人」は、夢のなかの住人のように美しく描写されるが、「最低な人」の最低な部分は、情け容赦なく描写される。しかし、十和子が求めた純粋な愛は、近くにあったのだった。
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