わりなき恋
幻冬舎文庫
岸恵子
2014年8月31日
幻冬舎
715円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
国際的なドキュメンタリー作家・伊奈笙子、六十九歳。大企業のトップマネジメント・九鬼兼太、五十八歳。偶然、隣り合わせたパリ行きのファーストクラスで、二人がふと交わした「プラハの春」の思い出話。それが身も心も焼き尽くす恋の始まりだった…。成熟した男女の愛と性を鮮烈に描き、大反響を巻き起こした衝撃の恋愛小説。待望の文庫化!
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(無題)
69歳の女流ドキュメント作家・伊那笙子がパリ行のファーストクラスで一回り年下の大企業役員・九鬼健太と知り合いになり、恋に陥るという内容です。興味の第一は70代女性の愛と性がどのようなものか、第二には岸自身の私小説とも思われる内容ですので、覗きみたいとの低俗な趣味です。そんなスノッブな僕にとって岸恵子のセレブ趣味には辟易とされます。若い時分なら許される持って回った表現も生硬で小説家としては未熟さを感じます。 パリ行きの飛行機で隣り合わせた事から始まるこの物語は、パリは無論の事、舞台をブルゴーニュやプラハ、サントペテルブルク、上海、東京・赤坂そして横浜と目まぐるしく変えます。それだけの空間的広がりがあれば、作品にもスケールの大きさが生まれるものですが、この物語はひたすら笙子と九鬼だけを見つめます。じつは僕は恋物語、大好きなんです。恋に正直な大人の二人が繰り広げる奔放な世界には、ワクワクします。だったらそれに徹すれば良いものに、プラハの春やゾルゲ事件を作中に挿入するのは、「私は綺麗なだけの女優じゃないのよ。社会性や政治意識も高いのよ」とことさらのごとくに主張しているようで、いささか鼻につきます。もう一人の岸恵子の分身ともいうべき登場人物・桐生砂丘子の冷たい皮肉の方がピッタリとします。本書ではセックスシーンも赤裸々に模写していますが、精神的アクセサリーを捨て去った砂丘子の視点で描いた方がありのままの笙子になったのではないかと思われます。 それにしても、人はどうして恋に落ちるのでしょうか。種の保存のためにDNAに刻み込まれているのでしょうが、閉経後の笙子が恋をするのは矛盾しているようにも思いますがね。その辺のところはよくわかりませんが、恋をしている人間の脳内ではドーパミンが大量に分泌されているそうです。ドーパミンは言うまでもなく脳内快楽物質ですね。脳科学的な言い方をすれば、快感をもたらすドーパミンの働きで人は恋し、ドーパミンは18ヶ月〜3年をメドに放出を止めます。この時、恋に終わりが訪れたり結婚へと移行する訳です。 笙子と九鬼が出会って4年半、ドーパミンの放出は終わりを迎えます。肌を重ねた時の積み重ねは、快楽の深さと比例します。これまでに感じた事のない高みに達した翌日に突然、別れがやってきました。しかし、この時はやがては訪れる別れを意識したに過ぎず、実際の別離にはこれまでと同じだけの時間を要しました。 そして本作が良くなるのは、これからなんです。しっとりとした大人の味、枯れてはいても深い愛情に包また男女、家族や祖国について穏やかでありながらも説得力豊かに語る姿には言うにいわれぬ年輪を感じます。
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