空飛ぶ広報室
幻冬舎文庫
有川浩
2016年4月12日
幻冬舎
847円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
不慮の事故で夢を断たれた元・戦闘機パイロット・空井大祐。異動した先、航空幕僚監部広報室で待ち受けていたのは、ミーハー室長の鷺坂、ベテラン広報官の比嘉をはじめ、ひと癖もふた癖もある先輩たちだった。そして美人TVディレクターと出会い…。ダ・ヴィンチの「ブック・オブ・ザ・イヤー2012」小説部門第1位のドラマティック長篇。
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国の誇り
この本は自衛隊のある広報室長が作家さんに売り込みをかけてきて出来上がった本です。もっと自衛隊を知ってほしい、間違った認識をしてほしくないという広報室の願いがこもった一冊です。 元パイロットの新米広報官が空幕広報室で成長していくお話です。 空幕担当のテレビ局の新人に「戦闘機は人殺しの機械でパイロットも殺人願望があるに違いない」と言われ、自身が広報官であることを忘れ「人を殺したいなんて思ったこと、一度もありません!」と「お客様」に向かって思わず怒鳴ってしまう失態から始まります。 その憤りと悔しさの滲んだ声に思わず息をのんだ。こんな酷い言葉ではあんまりすぎると思った。無関心ほど怖いものはない。自衛官だって人間だ。私達と同じように。特殊な職業だけれど特殊な人間って訳じゃない。心を持った家族もあるだろう普通の人なのに。 「自衛隊の信条は専守防衛」 いつでも撃てる、撃つ能力もある、しかし極限まで撃たないことを命ぜられているのが自衛隊だ。いざというときが来ないことを願いつつ、いざというときのための錬成に励む彼らは、無駄に終わらなければならない訓練に命を懸けて臨んでいる。自衛隊が動くときは基本的に不幸なことがあったときだけ。だからこそ、自衛隊は訓練を重ねながらも出動しないこと、無用の長物であることを望まれる。 国民の理解があると有事の際に活動しやすくなる、例えば災害派遣でも、理解してくれる人が多いと少ないとでは出動までに要する時間が違うことがある。阪神大震災、空前の大震災で自衛隊が四時間も足止めを食ったことは未だに社会のトラウマであろう。その四時間で何人救えた?何の為の日頃の訓練だ?最初の第一報が入ってから自衛隊はすぐさま出動体制を整えていたのに。実際に災害派遣の実績を重ねた結果、今では比較的容易に出動が可能になってきているようだ。だがそれは現実の被害を積み重ねた結果だ。被害を前例を作らないと出動できないのはあまりに悲しい。被害者を実績にしないために自衛隊は広報活動をしているのだ。 当初は予定していなかった、付け加えられた最後の章、ぜひ読んでいただきたい。東北大震災。そこには自衛官の活動が明瞭に書かれている。この人たちは国の誇りと思えた。すごい人たちだと思えた。 自衛官。我々はどんな状況にあっても、支援に回るのは当然の義務だ。被災したことは同じでも、我々は有事の訓練を受けている。自分の家族に、もし何かあっても自分は家にいないからなんとかやってくれと常に言い聞かせている。それが自衛官と所帯を持つということ。家族の死に目に立ち会えないことも、家族に看取ってもらえないことも、誰もが覚悟をしている。 全国から支援物資が届いても、自衛官は全く手を付けず、全て被災者に届けていたそうだ。自分たちの最低限の生活用品は各基地の自衛官からのカンパで賄った。そのカンパですらも切り詰めて余らせ、その分を被災者に届けていた。缶飯を食べるのは温めるための燃料を節約して被災者に回すためだ。基地に戻って休んでもすぐにまた救助に向かう。辛い光景をたんくさん見ても、どんなに打ちのめされていても、はやく現場に戻りたい、一人でも多く助けたいという思いからだ。 彼らの背負っているものはあまりにも大きい。重たすぎる。税金から給料をもらっているとはいえ、そこまで見知らぬ他人に尽くせるのだろうか。並大抵の覚悟ではできることではない。日本人が平和ボケでいられるのも、自衛隊の陰ながらの活動があるから、私達は安心して暮らせるのだと思う。もっとたくさんの人が自衛隊を本当の意味で知ってほしい。心からそう思います。
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古今東西の本棚
(無題)
航空自衛隊 のブルーインパルス に配属となる直前に不慮の事故からパイロットを断念した空井大祐 は広報室に異動。空井は未経験の分野に四苦八苦しながら成長していく るのですね。主人公や周囲の人を瑞々しい生き生きとした文章が印象に残りました。 筆者の文章は、丁寧な取材の裏打ちがあって実現しています。 本書には2011年東日本大震災 の松島基地 の状況をインタビューした短編「あの日の松島」が収録されています。
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