深川駕籠
時代小説
祥伝社文庫
山本一力
2006年4月30日
祥伝社
701円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
深川の駕籠舁き・新太郎は、飛脚、鳶といった男たち三人と足の速さを競うことになった。いずれ劣らぬ早駆けの達人である。しかも、深川から高輪への往復のうち帰りの大川は泳いで渡らなければならない。江戸の町は大いに盛り上がり、勝ち札が売りに出された。新太郎は相肩尚平の秘策を胸に師走の町を走る。しかし、道中、同心の大野が卑劣な罠を仕掛けていた…。
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(無題)
火事と喧嘩は江戸の華と言われるように、江戸の町はとても火事が多く、数年に一度大火がありました。江戸の消防は、いろは48組の町火消しが有名ですが、この他に江戸城と武家地の消防にあたる大名火消と定火消とがありました。 常火消しは幕府直轄の消防組織で与力6騎、同心30人、臥煙100~200人で構成されました。本編の主人公・新太郎は臥煙崩れの駕籠かきです。臥煙は、極寒でも法被一枚だけ、全身に入れ墨をし、白足袋はだしで、法被の着こなし粋にして勢よく、家柄ある子息も臥煙にあこがれて身を誤る者が少なくなかったそうです。そんな臥煙の中でも新太郎は纏振りだったのですから、その男振りはどれほどのものだったがしのばれます。屋根から転げ落ちて高いところに上れなくなった新太郎が、深川富岡八幡宮でぼんやりしているときにヤクザな男どもに囲まれたのが元力士の尚平でした。尚平に味方する形で乱闘になりましたが、これが二人で駕籠を担ぐ縁となりました。新太郎は実家の両替屋・杉浦屋から勘当されて人別帳から消されていました。尚平も勝浦の浜から蓄電したので、お互い無宿者です。そんな二人の身元を引き受けてくれたのが長屋の家主・木兵衛です。そして、駕籠舁きの仕事も斡旋してくれたのですから、二人は木兵衛に頭が上がりません。 この物語のクライマックスは、深川から高輪大木戸までの一里半を往復する駆け比べで、復路では大川を泳いで渡るという趣向が凝らされていました。この駆け比べに参加するのが、新太郎、千住の駕籠舁きの寅、飛脚の勘助、鳶の源次の四人。その一着を当てる単勝と一着、二着を当てる連勝の勝ち札まで発売され、深川の町は大いに盛り上がるのでした。
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