修羅の海戦
書下ろし太平洋戦争シミュレ-ション
Joy novels simulation
高貫布士
2009年3月31日
実業之日本社
942円(税込)
小説・エッセイ / 新書
コスタリカ領内から発進した輸送機の編隊は、ク8 2型グライダーをケーブルで曳航しながらカリブ海をパナマへと向かう。曳航されるク8 2型だけでなく、曳航する側の輸送機にも国籍を示す翼章等は一切描かれていない。これは本来の所属を隠すと同時に、コスタリカ領内に日本軍がいたことを隠蔽する意図もあった。発進場所は数個所に分散されており、作戦時には空中で編隊ごとに集合する。ただその機数は、曳航する輸送機だけでも一〇〇機を超えるのだから、果たして隠蔽できたかどうかは大いに疑問である。それでも途中、米軍から邀撃を受けなかったのは、このときメキシコ南部沿岸で米海軍が大規模な作戦を実施していたからだ。加えてコロンビアが、パナマに対して軍事行動に出ていたためだろう。しかもこのとき、すでにパナマ湾には帝國海軍聯合艦隊が出現し、手始めに沿岸砲台を破壊、続いて上陸作戦も始まっていた。事態がここまで混乱しては、さすがに在パナマ駐留の米陸海軍でも、すべてに厳重な警戒をおこなう余裕はなかった。そして、この混乱に輪をかけたのが、太平洋側のパナマシティに帝國陸海軍の空中挺進隊が落下傘降下したことであった。
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