銀翼のイカロス

随分前に読んだと思ってたのだけどネットとかでテレビ評を見ると「こんな話あったっけ？」という気がしていて…確認したらKindleで買ったけどDLしただけで読んでなかった！同時に買ったロスジェネなんとかだけ読んで満足しちゃったんだな（笑）…のでさっそく読みました。まぁ予定調和というか最後は半沢直樹が勝つのはわかっているのでそこに至るまでの過程が興味の中心なのだけど本作品もきちんと悪役が作られていてすごく楽しめた。ここを糸口にそうするのか！？とかこの人がヒントをくれるんだ！？とかとか。いやはややっぱりお上手です。テレビ見てる人多いだろうからこれ以上は踏み込みませんが（笑）

📝TVドラマ放映で再読。 ドラマチックなドラマが展開。

ドラマ前に再読。相変わらず痛快。

今や倍返しですっかりお馴染みの半沢直樹シリーズ第４弾。今回は誰に倍返しするのか、楽しみだ。舞台はJALを思わせる帝国航空の再建劇。蓮舫を思わせる白井国交大臣と小沢一郎を思わせる箕部敬治と役者が揃った上に天敵・金融庁の黒崎検査官までが登場とあっては、敵にとって不足のないところ。 誰もが題名から思い浮かべるのは、ギリシャ神話のイカロスであろう。鳥の羽を蝋で固めた羽を付けて脱出に成功したイカロスであったが、太陽にあまり近づくと鑞が溶けてしまうから高く飛んではならない、と注意されていたにもかかわらず、イカロスはつい調子に乗って高く飛び過ぎ、海に落ちて死んでしまう。「うまくいっても調子に乗るな」という教訓である。国策会社としてスタートしたJALの破綻原因を経営者あるいは従業員の傲慢さに求めたのであろうか。はたまた、簡単に溶けてしまう蝋から二度と落ちることのない銀翼を得るまでのJAL再建のストーリーを描いたからであろうか。 さて、今回も期待に違わず半沢直樹は、同僚銀行員から始まって紀本常務、白井国交大臣及び大臣の私的タスクフォースで辣腕を振るう及原弁護士、そして黒幕の箕部代議士にきっちりと倍返しするので、気持ちよく読み終えることができた。お話としてはJALの再建劇ではなく、政治家への不正融資が中心であった。小説の冒頭に牧野副頭取の遺書が掲げられている。牧野の自殺は、旧東京第一銀行と旧産業中央銀行の合併時、多くの不正融資を隠蔽するためであったことが、エピローグの中野渡頭取の回顧で判明する。中野渡の経営目標は何を置いても行内融和にあったが、やはり真相解明を最優先させるべきだったと自戒するのだった。 いかに銀行員の社会的ステータスが低下したとはいえ、やはり成績優秀なエリートである事は間違いない。銀行員の資質として有能である事ばかりが注目されるが、もっとも必要とされる資質が正義感である事を再認識させられた作品であった。人は誰しも青少年期には潔癖な正義漢であったはずだ。大人になるにつれて妥協することを覚え、何時の間にか組織の論理や人間関係の中で正義は埋没してしまうもののようだ。 もう一点、本作が味わい深いものに仕上がっているのが金融庁の黒崎検査官の存在にあることにも触れておきたい。黒崎といえば監督官庁の権力をかさにきて、オネエ言葉でネチネチと半沢に迫る嫌な奴と言った役どころであるが、今回は味な役回りを演じている。政権交代を果たし、政治主導を標榜する新政権に面白くない思いでいるのが、霞ケ関の官僚集団である。彼等が一矢報いるべく放ったのがどうやら黒崎であったようなのだ。黒崎の指摘は、帝国航空の関連会社の取引先にまで言及する。金融庁の検査にしては異例ともいうべき細かさだった。ところが、この取引先は、箕部が不正蓄財に利用した不動産会社だった。半沢は「箕部の不正に気付くように、黒崎はわざとその不動産会社名を口にしたのではないか」と考えたのだった。