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心は少年、体は老人。
超高齢社会を楽しく生きる方法
池田清彦
2015年11月30日
大和書房
1,540円(税込)
小説・エッセイ
人間は好きに生きてよいが、他人に迷惑をかけてはいけない。問題は何を持って迷惑か、ということである。「週刊朝日」『池田教授の机上の放論』待望の書籍化!
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(無題)
「人間は好きに生きて良いが、他人に迷惑をかけてはいけない。問題は何をもって迷惑かということである」。この言葉からもわかるように、著者は筋金入りのリバタリアンである。私も全く同感である。何をもって迷惑をとするかは、人によってざまざまである。だから、多様な生き様が生まれる。多くの人が規範とするのが世間の常識である。ところが、当たり前の事と思っていたことが、よく考えてみたら間違っていたりする。著者の指摘にあって初めて、そういえばそうだな、と得心し一種爽快な気分を味わえる。 南伸坊の著書に「俺って老人?」がある。この書名には少なからず驚かされた。意識していなかった心の中をズバッと言い当てられたような思いがした。つまり年寄りでありながら自分を年寄りと思っていない、みずみずしい心を持った一群の人々がいるのである。それではそれらの人々の特徴を考えてみよう。まず挙げられるのは、旺盛な好奇心であろうか。何にでも興味を示し、単純な疑問を大事に育む心がある。次いで素直な笑顔をあげたい。喜んだり驚いたり、あるいは悲しみを誰にでもわかりやすく表現する素直さである。そして、やはり落とせないのが、遊び心である。今置かれている状況を楽しんで、なんでも遊びにしてしまう工夫である。そんな心を持ち続ける人は、どこか生き生きしているし、素直である。 本書の中にはこんな一節がある。「1万年前まで野生動物だった人類は、生の自然の中で生活することから徐々に離れ、観念の中で暮らすようになってきた。観念とは捏造された同一性の謂である。観念の中で生きている人は、国家が実在すると言い張り、貨幣を実体だと信じ、人知によって自然をコントロールできると自惚れている。もちろん国家や貨幣は人間の観念が生み出した幻想であり、上手に利用すれば役に立つが、命をかけて守るようなものではさらさらない」。著者の恐ろしいほどの冷徹な認識である。しかし、このように突き放した見方は、人間の脳が作り出した観念に対してのみで、実体のある自然には暖かな視線が注がれる。
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