宮中からみる日本近代史

ちくま新書

茶谷誠一

2012年5月31日

筑摩書房

858円(税込)

人文・思想・社会 / 新書

大日本帝国における主権者は天皇であり、その大権は、各国家機関を経て代行されるシステムとして運用されていた。しかし、それは天皇が単なるお飾りであったことを意味するわけではない。天皇自身も政治的意思を持ち、それを取り巻く機関「宮中」もまた、国家の運営に大きな力を持っていたのだ。「宮中」という視点から、「内閣」「議会」「軍部」など、各国家機関の思惑、それらから織りなされる政策決定時の錯綜に注目し、大日本帝国のシステムと軌跡を明快に提示する。

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2.4 2018年02月11日

書名が魅力的だ。読んでみたくなる。そうして手に取ってみたが、正直言って退屈だった。新しい知見は全くなかった。明治以降の日本近代史を、ただただ教科書のごとく真面目に記述している。気鋭の学者が新書という読書人向けに発表の場を与えられて、一生懸命原稿を書いた、という感じだ。前半はとにかく我慢して読んでもらいたい。本書は後半以降がおもしろくなるのだから。 この本で注目すべきなのは牧野と最後の元老・西園寺公望の間のズレについて詳しく書いてあることである。あくまで天皇を政治的な責任から遠ざけようとした西園寺に対し、必要とあらば「聖断」を仰いで軍部を抑止することにも辞さなかった牧野。両者は「米英協調」の基本姿勢は共通していたが、この食い違いがなければ、もう少し効果的に軍部を抑止できた可能性はある。 そこに政治に強い意欲・関心を見せる昭和天皇である。米英との対決も辞さない「宮中改革派」の木戸・近衛らが台頭してきたことにより、戦争の拡大を抑制できなくなったのだろうか。 宮中は「天皇が大きな権力を持ちつつ自ら権力の行使はしない」という明治憲法下の政治を見る上では欠かせない視点の一つである。内大臣、宮内大臣、侍従長などを中心とするこの勢力は日本の近代史において独特の役割を果たすことになるが、その実態を丁寧に論じたのがこの本である。 当初、宮中は内閣・議会・軍と当事者が重なる存在であったが、牧野らが宮中を第4の権力的に動かすあたりから、独自の存在となって行く。そして、西園寺の衰えとともにその存在が変容・希薄化する流れは、近代史に新たな視点を与える事になろうか。

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