仮面の貴族(3)
道化の使命
創元推理文庫
ロビン・ホブ / 鍛治靖子
2012年4月30日
東京創元社
1,100円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
王子との信頼関係は綱渡り状態。もうひとりの“技”の生徒も心をひらかない。おのれのふがいなさを噛みしめるフィッツ。一方、いったんはなりを潜めていたパイボルトの一党もふたたび蠢きはじめていた。今度の狙いは王子だけでなく、“気”をもちながら古き血族の敵ファーシーアに忠誠を尽くすフィッツ自身と、ゴールデン卿。フィッツは王子を、そして六公国の平和を守れるのか。
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(無題)
『仮面の貴族』3冊まとめての感想。かなり変則的な読み方かつ、前作からかなり間が空いていたこともあって、少し理解に苦しんだ箇所もありましたが、やはりこのシリーズは面白いと再認識する。前作(『黄金の狩人』)のパイボルド事件と、この後の王 子一行による神呪字諸島への旅との橋渡しの役割を果たしている本作だが、作中に張り巡らされた伏線が次作へとどうつながっていくのかがよくわかったので、順序は違えどその点はよかったかな。 〈ファーシーアの一族〉でも満身創痍になって、何度も死にかけたフィッツですが、〈道化の使命〉でもそれは同様。本作でも(次作でも)、またしても死にかけてました。 30代半ばということで、まだ若さを残しつつも親であり師の立場に立ったことで、大人視点で自らの子供時代を回想したり、師匠のシェイドを別の視点で眺めたりしているのが面白い。ところどころに覗くフィッツの人生観めいた感想には、いちいち首肯することが多く、このあたりは作者の考え方も反映しているのだろう。 実際、作者のロビン・ホブは「主人公が選ばれし者だとわかって、すぐに最高の剣士になってしまうようなファンタジーは好まない」と表明しており、こうしたファンタジー観は主人公フィッツの人物造型にもしっかり表れている。確かにこのシリーズには異能の持ち主がたくさん登場する。しかしながら、そのような能力を持って生まれてきてしまったからこそ、それがゆえに起こる人間の苦しみ、弱さもまたつぶさに描かれている。魔法が使えるというのは素晴らしいことかもしれないが、勿論よいことばかり、楽しいことばかりではない。それどころか、異能が備わっていたがために運命が狂わされることもあるのだ。それはファーシーアから描かれてきたフィッツの人生そのものでもあるし、前作でパイボルドにさらわれたデューティフル王子もまた同様だろう。この意味で、このシリーズは等身大の人間を描いたファンタジーだと思う。ファンタジーといえば、何かとヤングアダルト扱いだが、大人こそ読むべきだろうと思う。 『指輪物語』のような派手派手しさはないけれど、屈指のファンタジーの傑作であることは言うを俟たない。 『白の予言者』のあとがきによると、原書では既刊の続編については翻訳予定はないとのことだが、やっぱり続きが気になりすぎる! 原文で読むしかないかなあ……(涙)。
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(無題)
『仮面の貴族』3冊まとめての感想。かなり変則的な読み方かつ、前作からかなり間が空いていたこともあって、少し理解に苦しんだ箇所もありましたが、やはりこのシリーズは面白いと再認識する。前作(『黄金の狩人』)のパイボルド事件と、この後の王 子一行による神呪字諸島への旅との橋渡しの役割を果たしている本作だが、作中に張り巡らされた伏線が次作へとどうつながっていくのかがよくわかったので、順序は違えどその点はよかったかな。 〈ファーシーアの一族〉でも満身創痍になって、何度も死にかけたフィッツですが、〈道化の使命〉でもそれは同様。本作でも(次作でも)、またしても死にかけてました。 30代半ばということで、まだ若さを残しつつも親であり師の立場に立ったことで、大人視点で自らの子供時代を回想したり、師匠のシェイドを別の視点で眺めたりしているのが面白い。ところどころに覗くフィッツの人生観めいた感想には、いちいち首肯することが多く、このあたりは作者の考え方も反映しているのだろう。 実際、作者のロビン・ホブは「主人公が選ばれし者だとわかって、すぐに最高の剣士になってしまうようなファンタジーは好まない」と表明しており、こうしたファンタジー観は主人公フィッツの人物造型にもしっかり表れている。確かにこのシリーズには異能の持ち主がたくさん登場する。しかしながら、そのような能力を持って生まれてきてしまったからこそ、それがゆえに起こる人間の苦しみ、弱さもまたつぶさに描かれている。魔法が使えるというのは素晴らしいことかもしれないが、勿論よいことばかり、楽しいことばかりではない。それどころか、異能が備わっていたがために運命が狂わされることもあるのだ。それはファーシーアから描かれてきたフィッツの人生そのものでもあるし、前作でパイボルドにさらわれたデューティフル王子もまた同様だろう。この意味で、このシリーズは等身大の人間を描いたファンタジーだと思う。ファンタジーといえば、何かとヤングアダルト扱いだが、大人こそ読むべきだろうと思う。 『指輪物語』のような派手派手しさはないけれど、屈指のファンタジーの傑作であることは言うを俟たない。 『白の予言者』のあとがきによると、原書では既刊の続編については翻訳予定はないとのことだが、やっぱり続きが気になりすぎる! 原文で読むしかないかなあ……(涙)。
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