投資で一番大切な20の教え
賢い投資家になるための隠れた常識
ハワード・マークス / 貫井 佳子
2012年10月31日
日本経済新聞出版社
2,200円(税込)
ビジネス・経済・就職
世界最大級の資産運用会社の創業者が、長年にわたり顧客に送り続けてきたレターを元に、成功する投資哲学を伝授。
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◆10心理的要因の悪影響をかわす なぜ投資家は都合の良い思い込みに陥るのだろうか。 答えは多くの場合、過去の教訓を一笑に付 す、あるいは無視することの気楽さ(これがしばしば強欲へとつながる) にある。経済学者ジョン・ ケネス・ガルブレイスの巧みな表現を借りれば、「金融に関する記憶が持続する時間は極端に短い」 ため、市場参加者はこうしたパターンが何度も繰り返されること、そしてそれが避けられないことを 認識できないのだ。 “同じ、あるいは非常によく似た状況が(時としてわずか数年後に)再び生じると、それは金融 業界、そしてより広い経済界における輝かしい革新的発見として、新しい世代に大歓迎されるの だ。そうした世代とは、だいたいが若く、そして例外なく自信に満ちあふれた者たちである。人 間の活動において、金融の世界ほど歴史がないがしろにされる分野はほとんどない。過去の経験 は、たとえ記憶に残っているとしても、今日の驚異的な発展を評価するだけの洞察力を持たない 者が、考えなしに駆け込む逃げ場であるとして、一笑に付されてしまうのだ" (一九九〇年、ジョン・ケネス・ガルブレイス著 『バブルの物語』) ◆11逆張りをする 周りが意気消沈して売ろうとしているときに買い、周りが高揚した気分で買おうとしているときに 売るには最大限の勇気が必要だが、そうすることで最大限の利益が得られる。 ジョン・テンプルトン卿 投資で成功するには、一般的な見方と相容れないために居心地の悪さを感じるポジションを貫き通す必要がある。深く考えずにポジションをとるポートフォリオ・マネジャーは、やはり深く考えずに方針をころころ変えてしまい、高値で買って底値で売るという手痛い二重の過ちを犯す。 強固な意思決定プロセスによって掴んだ自信があってこそ、投資家は投機的な高値で売りぬ け、周りが投売りしているときに、掘り出し物を買うことができるのだ。 …アクティブ運用戦略は、組織に組織的とは言えない行動を要求する。これは、ほとんど解 決不能なパラドックスだ。 型破りな投資方針を確立し、維持するには、居心地の悪さを覚える奇 抜なポートフォリオを受け入れなければならない。それは多くの場合、常識に照らし合わせれ ば、無分別としか言いようのないものである (二〇〇〇年、デイビッド・スウェンセン著「勝者のポートフォリオ運用」 [原題は「ポートフォリオ運用を開拓する]]) 究極的に最も儲かる投資行動は、文字どおり「逆張り」することだ。周りがみな売っている(そし て、そのために価格が安い) ときに買い、周りがみな買っている(そして、そのために価格が高い) ときに売るのである。これは孤独で、スウェンセンが言うように居心地の悪さを感じる行動だ。で は、なぜ反対(つまりコンセンサス)の行動をとれば居心地が良いと思うのか。それは、ほとんどの人がそうしているからだ。 まとめると、すばらしい投資成果をあげるために重要な要素は二つある。 ●ほかの者が気づいていない、あるいは評価していない(そして、価格に織り込まれていない)資産の値打ちに目を向ける。 ●実際にその値打ちがあることがやがて判明する(もしくは、少なくとも市場でそのように認識される。) 私が知る投資の成功例には、はっきりとした共通点がある。 多くの場合、挑戦的な逆張りで、居心 地の悪さがつきまとう (経験豊かな逆張り投資家は、群集とは異なるポジションをとることにむしろ 居心地の良さを感じるようだが)。たとえば、債券市場が崩壊すると、ほとんどの人は「落下するナ イフを掴むようなまねはしない。危険すぎるから」と言う。 そして、だいたいの場合、「混乱がおさまり、 不透明感が消えるまで待つ」と続ける。 要するに恐怖を感じていて、何をすべきかわからない のである。 一つ確信を持って言えるのは、ナイフが床に落ち、混乱がおさまり、不透明感が消えるころには、 超お買い得品はまったく残っていないということだ。 買うことが心地よいと思えるようになったころには、価格は超お買い得と言えるほど安くはなくなっている。したがって、居心地の悪さをともなわない利益率の高い投資というのは、だいたいが矛盾した話なのだ。 逆張り投資家として、願わくば用心深さとスキルを携えて落下するナイフを掴みにいくのが我々の 仕事だ。 だからこそ、本質的価値という概念が非常に重要な意味を持つ。本質的価値に対する考えを 維持し、 周りがみな売っているときに買うことができれば(そして、それが正しい判断だったと判明 すれば)、それこそが最も少ないリスクで最も高い利益をあげる方法なのである。 ◆12掘り出し物を見つける 最良の機会は、たいてい周りのほとんどの人が気づいていないものの中から見つかる。 賢明なるポートフォリオ構築のプロセスは、特に収益性が高い資産を買い、それらを買う余地を作 るために収益性の劣るものを売り、最も収益性の低い資産は避けることからなる。このプロセスを実 現するために必要な材料は、投資先候補のリスト、②それらの本質的価値の推定、③それらの価格 が本質的価値と比べてどうなのかという感覚、④それぞれの投資にともなうリスクと、それらを組み入れることによるポートフォリオへの影響に対する理解、である。 それでは、どのようにして価格は本質的価値との相対比較で見て低くなり、予想リターンはリスク との相対比較で見て高くなるのか。言い換えると、資産がしかるべき水準よりも低い価格で売られる ようになるのはなぜか。 ●ブームの対象となる資産と異なり、掘り出し物となる可能性を秘めた資産には、もともと客観的に 見て何らかの欠点がある。 たとえば、そのアセットクラス自体があまり魅力的ではない、その企業 が業界内で弱い位置にいる、 負債依存度が高すぎる、保有者にとって仕組み上、十分に保護されて いない証券であるといった点だ。 ●効率的市場においては、分析力と客観性を持った人々がかかわることで公正な価格が設定される。 したがって掘り出し物が生じる背景にはいつも非合理性、または理解不足がある。つまり、掘り 出し物は往々にして、投資家が資産を公正に評価していない、表面的なことにとらわれて内実まで理解していない、バリューに基づかない昔ながらのアプローチや先入観、制限から抜け出せない、といった状況で生まれるのだ。 ●市場の人気を集める資産と異なり、不人気資産は存在を無視されたり、毛嫌いされたりしている。 メディアやカクテルパーティーの場で話題にのぼったとしても、出てくるのは好ましくない評判である。 ●たいていの場合、不人気資産の価格は低下基調をたどっているため、一次的思考しかできない者は 「買いたいと思う人はいるのか」と疑問に思う (繰り返しに値するから改めて言うが、ほとんどの 投資家は過去のパフォーマンスを未来にも当てはめ、はるかに起こる確率が高そうな 「平均値への 回帰」よりも、現在のトレンドが続くことを見込む。 一次的思考をする者は、それまでの価格低下をその資産が割安になった証拠としてではなく、懸念材料とみなす傾向がある。 ●これらの背景から、掘り出し物はきわめて不人気の資産である傾向が強い。 資本はそこに近寄ろう としなかったり、あるいはそこから逃避したりし、誰もそれを保有することなど考えられない。 めざすは割安な資産を見つけ出すことだ。では、どこで探せばよいのか。手始めに以下のようなものに目をつけると良いだろう。 ●あまり知られておらず、 十分に理解されていない ●一見してファンダメンタルズ面で疑問点がある ●議論の的になっていたり、反規範的と見られていたり、 恐れられていたりする ●「真っ当な」 ボートフォリオに組み入れるには不適切とみなされている正しく評価されていなかったり、人気がなかったり、ないがしろにされていたりする ●リターンが低迷しつづけている ●このところ、買い増しよりも削減の対象になっている これらすべてを一文でまとめるとこうなる。 人々が実態よりも著しく悪い印象を抱いている状況で なければ、掘り出し物は生じえない。つまり、最良の機会は、たいてい周りのほとんどの人が気づい ていないものの中から見つかる。結局のところ、誰もが良いと感じ、喜んで買おうとするものに、お 買い得価格はつかないのだ。 ◆13我慢強くチャンスを待つ 本章における論点の一つ は、良いチャンスはつねにあるわけではなく、あまり動かずに状況を見極めることが、時として最善 策になるという話だ。 掘り出し物が出てくるのを我慢強く待つことが、最良の戦略となる場合も少な くないのである。 秘訣を教えよう。 積極果敢に動くよりも、資産のほうがこちらへ向かってくるのを待ったほうが、 良いパフォーマンスをあげられる。 売り手が積極的に売ろうとしているものの中から買うものを選ん だほうが、自分で「これが欲しい」と決めたもののリストに基づいて投資するよりも、高いリターン が得られる傾向があるのだ。 機を見るに敏な投資家は、お買い得価格で売られているから、という理由で投資する。価格が安くないときに買っても、うまみはないのである。 ◆15今どこにいるのかを感じとる 投資の世界において、サイクルほど信頼に足るものはない。 ファンダメンタルズ、心理、価 格、リターンには浮き沈みがあり、そのサイクルが過ちを犯す機会、あるいは他人が犯した過ちに乗じて利益をあげる機会を生み出す。それは当然の成り行きなのだ。 あるトレンドがどれだけ長続きするのか、いつ反転するのか、何が反転のきっかけとなる か、反転してどこまで行くのか、を知ることはできない。しかし、どんなトレンドも遅かれ早かれ終わりを告げることは確実だ。同じ方向に進みつづけるものなどない。 それでは、サイクルに関して我々にできることは何か。 いつどのように反転するのか前もって 知ることが不可能なのであれば、どうやって対処できるというのだろう。この件について私は確 固たる独自の見解を持っている。この先どうなるのかは知る由もないかもしれないが、今どこに いるかについては、よく知っておくべきだ。つまり、サイクルが変動するタイミングや振れ幅は 予測できなくても、我々が今サイクルのどの位置に立っているのかを解明し、その結論にしたがって行動するよう努めることが不可欠なのだ。 二〇〇六年三月二七日付 顧客向けレター 「これが現状だ」 より 振り子の振動を正確に予測し、つねに正しい方向に動くことができたら申し分ないだろうが、 そのように期待するのはまったく非現実的だ。 それよりも、以下のことに力を注いだほうが、は るかに分別がある。 それは、相場が振り子の軌道の一端に達するときに備えて警戒を怠らな い、変化に応じて自分の行動を調整する、そしてこれが最も重要なのだが、③サイクルの頂点と谷底で多くの投資家を完全にまちがった行動へと駆り立てる群集の振る舞いに、歩調を合わせ ない、だ。 一九九一年四月一一日付 顧客向けレター「第一四半期のパフォーマンス」より 今、サイクルのどの位置に立っているのかがつきとめられれば、次に何が起きるか正確にわかると 言っているのではない。しかし、現状を理解すれば、将来の出来事とそれについて何をすべきかとい う点に関する貴重な洞察が得られる。 我々にできるのは、せいぜいその程度のことだ。 簡単に言えば、我々は周りで起きていることがどんな影響をもたらすのか理解するために、懸命に 努力しなければならない。ほかの者が無謀なまでの自信から積極果敢に買っているときは、とても用 心深くなるべきだ。 そして、ほかの者が恐怖のあまり身動きがとれなくなるか、パニック売りに走っているときは、積極果敢になるべきだ。 だから周りを見渡して、自問するがよい。 投資家は楽観的か、悲観的か。 メディアに登場するコメ ンテーターは、果敢に攻めろと言っているか、買うなと言っているか。 新手の投資商品はすんなり受 け入れられたか、あっという間に見向きもされなくなったか。新株発行やファンドの新設は金儲けの チャンスと思われているか、それとも落とし穴の恐れありと見られているか。 資金の調達はすこぶる 容易か、あるいは不可能に近いか。 PERは歴史的に見て高いか低いか、イールド・スプレッドは小 幅か大幅か。これらすべてが重要な疑問点であり、その答えはどれも未来を予測しなくても導き出せ る。将来について推測しなくても、現状に目を凝らせば、卓越した投資判断を下すことも可能なのだ。 大事なのは、こうして現状に目を凝らし、そこから何をすべきか、答えが浮かび上がってくるのを 待つことだ。 ◆16 運の影響力を認識する タレブが「違った歴史」(起きた可能性がそれなりにあったと思われる別の出来事)と呼ぶ概念は非常に興味深く、そして特に投資の世界に当てはまるものである。 多くの人は未来が不確実性で覆われていることを認めているが、少なくとも過去は既知で不動だと 感じている。しょせん過去は歴史であり、絶対であり、不変だ。だがタレブは、実際に起こったことは、起きる可能性があったことの小さな集まりにすぎないと指摘している。したがって、ある計略 るいは行動が実現した環境下で) 良い結果をもたらしたとしても、その背景にあった決断が賢明であったとは限らないのだ。 もしかすると、最終的にその決断を成功に導いたのは、起きるとはまったく考えられていなかった 出来事であり、運が良かっただけかもしれない。だとすれば、(結果的にうまくいった) その決断は 軽率だった可能性もある。そして、数多くの「違った歴史」のどれかが実現していれば、その決断は 誤ったものになっていたかもしれない。 長期的には、すぐれた決断が投資利益をもたらすと信じるほかない。だが短期的には、すぐれた決断が投資利益につながらなかったとしても、冷静に振る舞わなければならない。 確率論的なアプローチをとる 「知らない派」の投資家は、結果はおおむね神頼みであり、それゆえ(特に短期的には)うまくいってもいかなくて も、自分たちの力量による部分はある程度、限られていると理解している。 ●結果がどのような要因によって生じたのかはきわめて不明瞭であるため、検証を重ねて解明される まで、戦略とその結果を(良かった場合も、悪かった場合も)懐疑的な目で見なければならない。 世界を不確実な場所と見るのなら、以下の点を同時に心がける必要がある。 リスクに対して健全な 尊重の念を抱くこと、未来がどうなるのかはわからないと意識すること、将来は確率分布の世界であ ると考え、それに基づいて投資すること、ディフェンシブな投資にこだわること、落とし穴に陥らな いよう気を引き締めることだ。思慮深い投資とは、まさにこういうことだと私は考えている。
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投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識 (日本経済新聞出版)
★4.2(620) 内容紹介 《本書は、私の投資哲学の声明文である》 《私の狙いは、読者がこれまでに触れたためしのない投資に関するアイデアや思考方法を伝えることにある》 ●どうしたら投資リスクを限定できるのか ●コンセンサスと別の見方をする理由とは ●市場環境が芳しくないときに、損失を最小限に抑えるには ●絶好の投資機会を見つける逆張りの考え方とは ●ミスプライシングが起こりやすい非効率市場を見つけるには ●マーケット・リターンを上回る「成功する投資」を達成するには ■バフェット大絶賛! 「極めて稀に見る、実益のある本」――バフェットも大絶賛。バフェットは著者に対し「君が本を書くなら、必ず推薦文を寄せる」と日頃から本の執筆を促していたそうです。出来上がった本書をバフェットは大変に気に入り、バークシャー・ハザウェイの株主総会で配布したほどです。 ■成功する投資哲学とは? 本書は成功した投資家が教える投資のノウハウ本ではありません。著者が強調するのは投資の難しさです。しかし、その難しい投資の世界で市場に40年以上にわたって勝ち続けてきた著者が語る哲学に満ちた本書は、投資の基本書として古典となりうる珠玉の名言に溢れています。市場の見方、リスクの捉え方、市場コンセンサスとは別の見方をする「逆張りの思考法」、ミスプライシングが起こる非効率市場の見つけ方など、根本的かつ重要な投資哲学が1冊に! ■著者は巨大ファンドの創業者 著者が創業したオークツリー・キャピタルは、運用資産残高が約800億ドル(約6.2兆円)にのぼる巨大ファンドを運用し、高利回り債(ハイイールド債)と不良債権(ディストレスト・デット)への投資を得意とする著名投資会社です。 内容(「BOOK」データベースより) 世界最大級の資産運用会社の創業者が、長年にわたり顧客に送り続けてきたレターを元に、成功する投資哲学を伝授。 著者について 著者: ハワード・マークス オークツリー・キャピタル・マネジメントの会長兼共同創業者 オークツリー・キャピタル・マネジメントは、ロサンゼルスを拠点とした投資会社で、運用資産は8000億ドル以上。高利債投資や不良債権への投資を得意とする。ウォートン・スクールにて金融を学び、シカゴ大学にてMBAを取得。 訳者: 貫井 佳子 翻訳家 青山学院大学国際政治経済学部卒業。証券系シンクタンク、外資系証券会社に勤務後、2002年よりフリーランスで翻訳業に従事。「フォーブス日本版」の翻訳記事を数多く手がける。日本証券アナリスト協会検定会員。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) マークス,ハワード オークツリー・キャピタル・マネジメント会長兼共同創業者。ロサンゼルスを拠点とするオークツリー・キャピタル・マネジメントは運用資産800億ドル以上を誇る投資会社で、ハイイールド債投資や不良債権への投資を得意とする。ペンシルベニア大学ウォートン・スクールにて金融を学び、シカゴ大学経営大学院にてMBAを取得 貫井/佳子 翻訳家。青山学院大学国際政治経済学部卒業。証券系シンクタンク、外資系証券会社に勤務後、2002年よりフリーランスで翻訳業に従事。「フォーブス日本版」の翻訳記事を数多く手がける。日本証券アナリスト協会検定会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです
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