霖雨(りんう)
PHP文芸文庫
葉室麟
2014年11月7日
PHP研究所
814円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
天領の豊後日田で、私塾・咸宜園を主宰する広瀬淡窓と、家業を継いだ弟・久兵衛。画期的な教育方針を打ち出す淡窓へも、商人としてひたむきに生きる久兵衛へも、お上の執拗な嫌がらせが続く。大塩平八郎の乱が起きるなど、時代の大きなうねりの中で、権力の横暴に耐え、清冽な生き方を貫こうとする広瀬兄弟。理不尽なことが身に降りかかろうとも、諦めず、凛として生きることの大切さを切々と訴えた歴史長編。
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(無題)
本編の主人公・広瀬淡窓は実在の人である。儒学者・淡窓の開いた私塾「咸宜園(かんぎえん)」には、全国からの入門希望者が引きも切らなかったのである。彼らに対して淡窓は『三奪の法』を強いた。すなわち年齢、学歴、身分を一切無視し、実力一本やりで評価したのだった。封建社会にあっては、この実力主義は破天荒と言っても良いやり方であった。身分の高い武士には反発もあったようだが、この平等主義は、人々に広く受け入れられた。事実、門人の半数以上は町人であった。教育者としての淡窓の優れた一面である。 さて、淡窓の思想の主軸は「敬天」にある。文字通り読めば「天」を「敬う」ことである。敷衍すれば『人間は正しいこと、善いことをすれば天から報われる、と説く応報論』である。中国渡来の「天」思想に日本古来の自然崇拝を加味したようなものであろうか。このような感覚は、現代日本人の潜在意識の中にも共通認識として脈々と受け継がれているものだ。 葉室麟の生き方や世間との関わり方には、淡窓とおなじものが強くあったのだろう。それは作品に見事に表れているからだ。葉室作品の主人公には成功者はいない。市井の片隅で評価されずに、無様なまでに不器用に生きる男たちである。しかも葉室麟は、信念を貫く男の生き様に美しさすら見出していたのである。それが現代日本人の血にも流れる精神性と呼応して感動を呼び起こすのだろう。葉室作品の最も魅力的なところだ。
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