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中国の大問題
PHP新書
丹羽宇一郎
2014年6月17日
PHP研究所
880円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
中国の弱みに石を打て。彼らに資することはやめ、彼らを利する戦略をもて。商社マンとして30年、大使として2年半。政財界トップの性質や思惑、はては国境近くの庶民や少数民族の生活実態まで、「病める中国」の姿をつぶさに見つめた迫真のレポート。
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(無題)
韓国で元サンケイ新聞ソウル支局長が在宅起訴された。罪状は朴槿惠大統領の名誉を傷つけたからだという。実態は地元紙に載っていた記事を紹介したにすぎない。何を血迷ったか、或いは頭がおかしくなっか、呆れて物も言えない。我が国の国民感情の大部分は、まともに相手できない国と見ていることだろう。憎韓とともに嫌中もいまや一般的だ。世界第2位の経済大国となった中国の経済力を後ろ盾にした傲慢さ、或いは領土的野心剥き出しの外交に我慢ならないのだ。 こんな世間の風潮に悪乗りするレイシストもいるので気をつけなくてはいけない。すでに我が国経済は東アジア経済圏に組み込まれて機能している。身近な所では私たちが身につける衣料品は中国製かベトナム製だし、iPhoneだって中国製だ。輸出立国と言うが、それでは輸出相手国の第1位が中国である事をどれだけ意識しているのか疑問なところもある。気にくわないからと、ソッポを向いて済む話ではないのである。成熟した先進国の先輩として、事態を冷静に見据えた上で自らのポジショニングを決める事が求められら。 そんな人にうってつけなのが本書である。著者の30年にわたって政経両面から中国を見続けてきた経歴からいっても、現在の中国を冷静に分析し我が国の国益を語れる人は他に見当たらない。本書が売れているわけである。 さて、中国の現状分析を行うにあたって著書は、次のような視点を明らかにする。第1に14億人という人口の持つ意味、第2は経済、第3に地方、第4 少数民族、第5 日中関係、第6 安全保障である。さすがに大商社を率いてきた経営者、中国大使を務めた人物だけあって、人やモノを見る揺るぎない視点、スケールの大きな世界観に裏付けされた分析には眼を見張るものがある。まず、著者は中国の人口14億人を日本製品のマーケットと見るのである。この辺は元商社マンの面目躍如である。仮に感情に流されて、14億人の巨大市場をみすみす捨てるならば国益に反する、と明言すら。徹底したリアリストである。 また、本書では、習近平が著者に語った言葉として「日本と中国は住所変更ができない間柄」と言っている。それだけに、お互いに良き隣人関係を目指すべきは当然であろう。しかしながら、私たちの心の中には払拭することのできない不安が残るのだ。それは民主主義では無い一党独裁の社会体制を取る中国を信頼して間違いが無いのか、手痛いしっべ返しが待っているのではないかとの疑念である。 これに対して著者は次のように述べている。これから先世界一の経済大国になり、教育が進んで民度が上がり、インターネットによって情報が流通していけば、国民の声を無視することがいずれできなくなるだろう。民意を十分に反映しない政治体制はいずれ改革を余儀なくされる。中国が民意を反映する体制になるためには、アメリカのように地方分権を推し進めた連邦国家になる以外に道がないと思われる。 したたかで誇り高きこの隣人と理解し合うのは決して簡単ではない。
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