ふるさと銀河線
軌道春秋
双葉文庫
高田郁
2013年11月12日
双葉社
660円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
両親を喪って兄とふたり、道東の小さな町で暮らす少女。演劇の才能を認められ、周囲の期待を集めるが、彼女の心はふるさとへの愛と、夢への思いの間で揺れ動いていた(表題作)。苦難のなかで真の生き方を追い求める人びとの姿を、美しい列車の風景を織りこみながら描いた珠玉の短編集。
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(無題)
歳をとると涙腺が緩くなるのだろうか、いや、年寄りは喜怒哀楽に動じなくなるとも思えるが、少なくとも高田郁の小説にあっては涙なくして読むことはできない。何処にも憤りをぶつけることのできない、辛く寂しい人生の局面が訪れる可能性は誰にでもあるものだ。それが人生の黄昏時期である中年以降であるなら、侘しさはより一層だ。どんなに辛くても自分の責任として背負い込んだ荷物の重さから、男の心を暖かく開くのは、パートナーの思いやりと人生を共に活きる同士的愛情である。そんな想いを新たにさせる場面に遭遇した時、涙を禁じ得ないのだ。第一章『お弁当ふたつ』はリストラ解雇された夫が家族に言い出せないまま、二ヶ月間も毎朝家を出て房総半島を一周する電車に乗って時間を潰す話である。 本書に収録された短編は、軌道春秋とサブタイトルにある通り、九編全てが鉄道に纏わるお話しで、人生の一場面を印象的に切り取っている。多くは辛く悲しい内容だが、人と人との絆が希望を与えているのが共通している。 標題にもなっているふるさと銀河線は、北海道の北見から池田までの全長140キロ、道東の雄大な大自然の中を小さなディーゼル車が懸命に走る路線だ。しかし、銀河といって誰もが思い浮かべるのは、銀河線ではなく宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』である。そして星子は、これを一人芝居に仕立てて、コンクールで優勝した。まだ15歳の中学生である。演劇の才能の可能性に期待して当然である。しかし、星子は頑なにまで地元陸別の高校進学にこだわるのだった。星子は両親を事故で失い、兄が自分を犠牲にして親代わりとなって育ててくれたことへの遠慮があるのだろう。華やかな演劇ではなく、地味な福祉への進路を当然のこととする星子には、そんな心理が働いているようだ。しかし、兄は妹の幸せを願っている。兄は恩師や周りを動かして妹の心変わりを促すのだった。
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ななここ
現代短編。
まず現代物な事に驚きました。 文章がいつもの優しいキチンとした文章なので、現代の人の自分勝手な所はより悪辣に見えます。 一番好きなのは表題作ではなく、「車窓家族」という物語。 個人的には人の家の中が見えるのは好きではないのだけれど、全く知らない老夫婦の生活を車窓から眺め、心が温まったりヤキモキしたりします。 でもこの短編は優しい話ばかりではありません。 少し希望は感じさせつつも、アルコール依存症の恐ろしさや、バブル崩壊の時の事や阪神淡路大震災の事も少し書かれています。 続き?もあるようなので楽しみです。
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