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雪消水
おいらか俊作江戸綴り
双葉文庫
芦川淳一
2010年2月28日
双葉社
660円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
滝沢俊作が住む昌平店に男の子を背負った男が深夜紛れ込んできた。武家屋敷に盗みに入ったが、若い武士に「若を頼む」と言われ何も盗らず子どもを背負い逃げてきたと言う。若君を武家屋敷に届けて欲しいという厄介事を抱え込んだ俊作は思いあまって茂兵衛に相談。単身武家屋敷に乗り込み打った珍妙な芝居とは?堂々のシリーズ完結編。
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(無題)
滝沢俊作が藩を追われた訳が判明し浪人暮らしを選択したのだから、これ以上の話の進展はあり得ないし、仮にあるとすれば町医者・古茂田宗伯に弟子入りし、娘・美雪と所帯を持つ事かな、と予想される。まあ、ここまで読み進めたのだから、最後にどんな終わり方をするのか、完結編の本巻を読まずにはいられないというものだ。 浪人暮らしの俊作に確かな活計の道がない以上、用心棒は確かな収入源である。用心棒を務める内に降りかかる事件に揉み込まれ、得意の剣術で解決に至るのが基本のパターンである。お話は盗みに入った武家屋敷で殺されかけていた子どもを助けた人のよい盗人が、滝沢俊作や荒垣助左衛門の噂を聞きつけて、子どもの救済を頼むために彼らが住む長屋の屋根から落ちて来るところから始まる。こどもは何故殺されようとしたのか。祈祷師が、このままでは災難が起こると子供の母親を脅して子どもを殺させて、お家の乗っ取りを謀ったためであった。滝沢俊作と荒垣助左衛門、そして剣術道場を隠居して彼らの用心棒稼業の世話などをしている桑山茂兵衛らと一計を案じてその祈祷師を討ち取り、子どもが無事に育てられるようにしていくという第一章「千里眼」など。 本シリーズはこの巻で完了し、あとがきによると、作者は別の作品に取り組むようだ。また、作者はひとの心の琴線に触れる人情話と胸踊る活劇、グイグイと、先を読みたくなる展開、さらには江戸情緒の横溢した小説を目指しているという。全くの所大賛成だ。是非読み応えのある新シリーズを刊行して貰いたいところである。ただ、この作品は、風邪気味の弱った体力の中で読むには、ちょうどよいのかも知れない。
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