日本民族の誕生

環日本海古民族と長江流域文化の融合

推理・邪馬台国と日本神話の謎

安本美典

2013年10月31日

勉誠社

3,080円(税込)

人文・思想・社会

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3.4 2018年01月27日

本書は「日本民族の起源」であって「日本人の起源」ではない、と著者は言うのだが、浅学非才のわが身にあってはその違いがよくわからない。ともあれ、縄文人が暮らしていた日本列島に朝鮮半島から弥生人が大挙して押し寄せ、日本民族が出来上がったと考えてきた私たちの常識に、本書は真っ向から異を唱える。 本書の主張は、日本民族の源流を中国大陸長江流域の雲南省などの少数民族に見出すのだ。この場合、中国大陸と言っても間違っても漢民族と考えてはいけない。かつて長江流域には、漢民族による黄河流域中原文明とは全く違った文明が栄えていた。それが漢民族南下の圧迫を受け、これらの人達が東や西や南に逃れた。そして、稲作とともに日本列島に至ったのが原日本人であるとの説である。その根拠として高床式建築、千木、カツオ木、羽子板による羽根突き、竹馬、下駄、歌垣などの習俗が我が国と、中国の奥地、東南アジアに残っているのをあげている。下駄を履いて羽子板で遊ぶ人々が我が国以外にもいたとは、大いなる驚きであった。 さらに面白い事には、照葉樹林文化が紹介されていることだ。その特徴はイモ類、アワ、ヒエ、キビなどの雑穀類の栽培、稲作、絹などの製造にあり、モチやナットウ、スシをたべ、絹や漆を利用する。麹で酒を作り、高床の家に住む、歌垣や鵜飼の習俗がある。照葉樹林文化はヒマラヤ山麓から東南アジア北部山地、南中国、日本西部にかけての東南アジアの温暖地帯に分布する、と言うのだから思わず膝を叩いてしまうほどである。 ここまでが本書の前半部分で、これ以降いよいよ佳境に入る。言語を通じての日本民族のルーツ探しである。著者はここでユニークかつ斬新な新説を立てる。それは「原倭人」の設定である。大和言葉を話す倭人の元となる現倭人が九州北部から朝鮮半島南部に住んでいて、弥生時代に長江下流域からビルマ系言語を使う人々が稲作を携えてやって来て、現倭人と混交して倭人が成立したと考える。だから著者は邪馬台国九州北部説をとる。さらに、日本人北方説と日本人南方説を紹介するとともに、両説の不備にも言及し、自説によれば多くの矛盾も解消する旨を述べている。

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