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御浪人栄達指南帳
中山良太
2013年9月30日
ポプラ社
1,650円(税込)
小説・エッセイ
指南帳が導く、仕事ナシ金ナシ自信ナシ浪人、栄達への道!25歳の著者が希望を込めて描く、完全等身大の時代小説。
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(無題)
25歳の若者が書いた時代小説がどんなものか、興味津々です。時は天下分け目の関ヶ原の戦いから10年、戦国の時代が去って主君を持たない武士にとっては、生きずらい時代となっていました。そんな時代背景の中で本編の主人公・源八が仕官の口を求めて活動する物語です。御浪人栄達指南帳とは、いわば就職マニュアルのようなものです。幾度となく仕官の面接に失敗してきた浪人・源八が偶然「栄達指南帳」を手にした事で人生が大きく変化していきます。もう一つ、源八が就活で最大の武器とするのが祖父を始祖とする「印地打ち」です。この技は石礫を放つ実戦的武術ですが、武家からは嘲笑の対象にしか過ぎません。それもそのはず、正史には登場しませんが、印地打ちは平安時代から非人の得意技だったのですから。著者はこの辺の調査をどこまで行って本書を執筆したのでしょうかね。まあエンタテインメントとして読めば、時代考証の荒さは許されるのかもしれません。 さて、過去30回にも登る仕官の面接で得意技を問わられて「印地打ち」と答えた途端に不合格を告げられる源八には、これから先、仕官のための活動を続けていくだけの気力が残っていませんでした。土木工事のアルバイトで稼いだお金で酒を求め、春風の気持ち良い宵に柳の木の下で酔い自害しようと決めました。ところが柳の木の下で不思議な老人と出会ったところから、源八の運命は大きく動いて行くことになります。老人の勧めに従って源八は、徳川勢と豊臣勢決戦の地・大坂城へと向かいます。 大坂城冬の陣を前にして豊臣方では、傭兵を募集していました。長い失意のなか、始めて戦力として認められた源八でしたが、所詮は投石隊の一員、いわば雑兵に過ぎませんでした。それでも実戦の中でこそ己の実力が発揮されるものと、密かに心に期した源八でしたが、緒戦の源八の働きは惨めなものでした。しかしながら、物語の大詰め、夏の陣で源八に思わぬ大役が巡ってきます。青年の心の葛藤と成長を爽やかに描く、現代にも通じる新感覚のエンタテインメント時代小説ですね。
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