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認知症新時代
私らしく生きる
毎日新聞社
2015年10月31日
毎日新聞出版
1,430円(税込)
美容・暮らし・健康・料理
認知症700万人時代。本人の思いをどうケアに反映させれば良いのか。もがき苦しみながら居場所を見つけた当事者を、初めて真っ向から捉えたルポルタージュ。2014年度第33回ファイザー医学記事賞優秀賞を受賞!
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(無題)
何をもって認知症の新しい時代というのだろうか。認知症になった本人は何もわからなくなるから、ある意味幸せ。大変な思いをするのは家族。これが認知症への一発的な理解と感想であろう。ところが、この認識は間違っていたのだ。認知症になったからといって、いきなり何もかもわからなくなるのではなく、むしろ、今までできていたことができなくなっていく自分自身に苦しみ、間違いを指摘したり、無視したりする周囲の反応に傷ついていたのだった。これは、主に当事者本人が声を上げる事で明らかになってきたのだ。本書は認知症の当事者を丹念に取材したルポルタージュである。 65歳以上の老人の四人に一人が認知症及び予備軍となれば、それらの人々に投じる施設を始め医療、介護などの社会資本は膨大なものとなり、国の財政が持たなくなるのは容易に想像できる。このため、認知症の人が住み慣れた地域の中で暮らし続ける方向が模索される。これが国の新オレンジプランの骨子である。経済的側面ばかりでなく、たとえ認知症になっても尊厳をもって生き続けることは何より大事になる。認知症の人の意思が尊重され、自分らしく暮らし続ける社会の実現である。 これは、統合失調症の患者を精神病院に隔離したり、知的障害児を養護学校に集約して、あたかも存在しないかのように装ってきたこの国の失敗から学んだのかもしれない。 それでは、認知症になっても安心して生きていける社会にするために何が必要なのか。私たちはどうしたらいいのか。私たちは何ができるのか。何かできることがあるのなら、やらせて欲しい。多くの人がそう思うのではなかろうか。認知症サポーター養成講座がある事を市の広報誌で知り、受講を申し込んだ動機もそんなところにあった。ところが、この講座はチョットばかり期待を裏切るものであった。サポーターは認知症を正しく理解し、認知症の人や、その人を取り巻く家族の良き理解者とのことであった。だから、講座を受けてサポーターになったからといって認知症の人をサポートする具体的活動が待ち受けているわけではないのだ。既に500万人以上の人が受講しているのに、これでいいのかな、との実感を抱いたものだった。 そして、厚生労働省が打ち出した新オレンジプランの目玉が「認知症カフェ」である。これは、認知症の人やその家族、専門家や地域住民が集う場であり、お互いに交流をしたり、情報交換をしたりすることを目的とする。僕が住まう市でも今年5回ほど開催されたが、活発とは言い難い。国の施策だから市としてやらざるを得ない、みたいな感じである。もっとも我が街は千葉ニュータウンだけあって、老人人口比が16%と全国平均よりかなり低い。それだけに、老人向けの施策には力が入らないのかもしれない。
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