最前線

東京湾臨海署安積班

ハルキ文庫

今野敏

2007年8月31日

角川春樹事務所

748円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

東京・お台場のテレビ局に出演予定の香港映画スターへ、暗殺予告が届いた。東京湾臨海署の安積警部補らは、スターの警備に駆り出されることになった。だが、管内では、不審船の密航者が行方不明になるという事件も発生。安積たち強行犯係は、双方の案件を追うことになる。やがて、付近の海岸から濡れたウェットスーツが発見され、密航者が暗殺犯の可能性がー。安積たちは、暗殺を阻止できるのか。(「暗殺予告」より)新ベイエリア分署・安積班シリーズ、待望の文庫化。

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3.2 2018年01月25日

東京湾臨海署刑事課強行犯係は安積警部補が係長である。この場合、安積の部下は「係長」と呼ぶのが順当だろう。ところが須田部長刑事だけは「ちょうさん」と呼ぶ。須田は部長刑事だから、通称「デカチョウ」と呼ばれてもおかしくないないのに、自分のことはさて置いて、警部補の安積をちょうさんと呼ぶ。これはかつて安積がまだ部長刑事であったとき、新人刑事・須田とコンビを組んで仕込んだ名残りである。これを踏まえて速水が安積を「デカチョウ」と呼んだところ、安積が「俺はデカチョウではない」とこの呼称を拒んだ。そこで速水は「それではハンチョウ殿と呼びましょうか」と言い、それ以後速水はハンチョウと呼ぶ。本シリーズを原作とするテレビドラマ「ハンチョウ」は、こうして生まれた。 さて、本作は6編からなる短編連作である。そのなかから表題作「最前線」を紹介しておこう。村雨とコンビを組んでデカ魂を叩き込まれている最中の桜井が、忙しいことで有名な竹の塚署の帳場に駆り出される。そこで偶然見かけたのは、以前は安積班に所属していた大橋であった。桜井は、大橋と協力して捜査に当たるが、現在の自分と同じように以前は村雨と組んでいた大橋の成長と変貌ぶりを見て驚きを隠せなかった。かつての大橋は無口で安積の表現を借りると「飼い慣らされた犬」の様な刑事であった。言ってみれば現在の桜井である。それが現在の大橋は犯罪発生率が高い竹の塚署で、群がる記者たちをいなしながら着実に仕事をこなしていく。地味な仕事でも腐らず地道にこなす。まるで刑事の鏡のようだ。その変貌に桜井ならずとも驚かされるが、彼が今「最前線」の兵士として戦えるのも安積班で村雨に鍛えられたからだ、と語るラストシーンは感動的である。

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