世界屠畜紀行

内澤旬子

2007年2月28日

解放出版社

2,420円(税込)

人文・思想・社会

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toruo

(無題)

-- 2022年05月12日

自分で豚を育てそれをつぶして食べる、というノンフィクションが面白かった作者の打表作、なのかな。動物が食品になるまで、のルポタージュ。芝浦だけではなく、韓国、エジプト、チェコ、インド、沖縄、モンゴル、アメリカと屠畜場を巡り豚、羊、山羊、犬、牛、がどのように殺されて食品に加工されるか、を紹介した作品。世界を巡っているのは意味があって日本のように屠畜(屠殺ではなく屠畜、というところにも拘りがある)に関わる人が差別の対象になっているのか、を調べようというもの。その意味では日本では品川だけではなく沖縄と、皮革の加工に関わる地域も取材している。前者の屠畜場のルポタージュという意味では成功していて加工の過程がイラストも交えて丹念に紹介されており非常に興味深い。一方で後者の目的に関しては残念ながら全く達成できていない、という印象。作者自身が屠畜を見ても全く怯まないというかむしろ面白がる珍しいタイプということもあり、日本において何故、屠畜や皮革に関わる者が差別されたのかに関しては掘り下げが全くなされておらず、動物がかわいそうという意識があってそれが仏教の不殺生戒に結びついて差別に至った、という整理で終わっているのは少し残念だった。不殺生戒が差別の源泉であれば漁師や板前も差別されていたはず。その辺の掘り下げがあったらもっと良い作品になったのでは、と思った。尤も極めて興味深い作品なのは事実で、肉類を食べる意識が少し変わったかもしれない。

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