小笠原諸島に学ぶ進化論

閉ざされた世界の特異な生き物たち

知りたい!サイエンス

清水善和

2010年7月31日

技術評論社

1,738円(税込)

科学・技術

小笠原諸島は「東洋のガラパゴス」と呼ばれ、独自の自然環境や生物進化論の見られる島である。チャールズ・ダーウィンが進化論を発想するにあたって重要なきっかけを作ったとされるガラパゴス諸島と、太平洋を挟んで対極に位置する日本の小笠原諸島では、本家ガラパゴスに勝とも劣らないすばらしい自然が見られる。では、小笠原の自然へようこそ。

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3.2 2018年01月27日

我が地域の図書館は、時々企画展を行う。今回は我が国の世界遺産である。関係図書が展示されていたが、小笠原関係図書は、本書の他一点であった。それだけ情報が少ないという事は、とりもなおさず手付かずの自然が残されているのだろうと思い本書を紐解くところとなった。 そもそも島とはいったいどのようなものなのか、本書はその定義から説き始める。まず島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものとされる。これは誰にでもわかる。次に島は大陸島と海洋島とに分類される。大陸島とは元々 大陸や本土と陸続きであったが、いつか大陸と分断された島で、海洋島とは島が成立して以来一度も大陸・本土と地続きになったことがない島のことである。小笠原諸島は海洋島であり、マントル対流の沈み込みによって地殻が盛り上がって生成された、プレート境界に位置する列島、つまり島弧でもある。しかも、プレートの沈み込みの始まりから現在の島弧火山活動に至るまで、一連の過程が地上で観察できる、世界で唯一の場所なのだ。 本書は、小笠原諸島の歴史と生物の由来や独自のユニークな生物た ちを紹介している。一方で、外来種の侵入により絶滅、あるいは瀕死の状態に陥っている固有の動植物の保護の実態が述べられている。著者の30年・50回以上にわたる小笠原通いのなかから得た情報をもとに著された小笠原の自然の全体像が平易な文章で記されている。 小笠原は小さな島である。その割には固有種の比率が高い。小笠原は、外来種に滅法弱いという脆弱性を孕んでもいる。日本人に発見されながらも、その立地性から海外の来訪者や移住者も受け入れてきた小笠原諸島には、昆虫を食べ尽くすグリーンアノール(中南米産のトカゲ)や雑食のアフリカマイマイ、肉食性のプラナリアの仲間であるニューギニアヤリガタリクウズムシ、聟島など無人島で大繁殖したノヤギなどの動物の他、空ニッチにうまく収まったリュウキュウマツや純群落を作るギンネム、在来種を駆逐してしまうアカギやガジュマルといった植物群がさまざまな経緯を経て諸島に入り込んでいる。既に駆除が進んでいるものもあるが、代わりに新たに持ち込まれるものもあり、在来種を守っていくためには一時たりとも油断できない状況にあるといえる。世界自然遺産を護っていかねばなるまい。

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