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南方熊楠の思想と運動
Sekaishiso seminar
後藤正人
2002年6月30日
世界思想社
3,300円(税込)
人文・思想・社会
和歌山中学から東京大学予備門時代、そして神社合祀令廃滅運動を終えた大正中期から晩年の1941年に至る時代を通じて、比類なき粘菌学者・思想家、かつ自然保護に奮闘した、しかも稀にみる国際人でもあった南方熊楠の実像に迫る。
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(無題)
STAP細胞発見の論文が掲載された科学雑誌ネイチャー、科学界における同誌の権威は世界的である事がdr.obokataによって人々の間に広く知られるところとなりました。そのネイチャーに明治時代、博物学や民俗学の論文を50本近く発表し、当時の世界的学者と友好を結んだ人がいたと聞けば、どんな人だったのか、俄然興味が湧きます。その人の名は南方熊楠。東大も出ていなければ、博士号も持たない在野の人ですから、偉人や賢人として人口に膾炙することもありません。むしろこの人は、偉人と言うより異人、賢人と言うより変人と言った方が良さそうな人物であったようです。 今から20年ほど前になりましょうか、暮れなずむ紀伊田辺の住宅街をぶらぶらと歩いている時に熊楠の旧宅を見つけました。その当時は今のように顕彰館も建っていませんでしたので、普通の仕舞た屋がひっそりと佇んでいるようでした。その当時から熊楠には興味を持ってはいたのですが、それ以上一歩を踏み込む事はせずに今日まで来てしまいました。なにも意を決する程の事も無いのですが、熊楠の事を少し学んでみようと本書を読み始めました。南方熊楠という人はどんな人だったのか、彼の学問はどんなものだったのか、あるいは熊楠の人生の軌跡を知りたい、との素朴な興味です。 そんな僕の好奇心を本書は満たしてくれたかどうか、それを有り体に言えば否です。熊楠の研究がまだ途上にあり、分かっていない部分が多いと言うこともあるのでしょうが、僕の印象は、この本は学者の研究成果の発表の場となっているに過ぎない、と言うものです。内容の大部分は、熊楠の思想と運動よりその当時の社会情勢の記述に割かれています。欲求不満が残る一書でした。
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