トップシークレット・アメリカ

最高機密に覆われる国家

デイナ・プリースト / ウィリアム・アーキン

2013年10月31日

草思社

2,860円(税込)

人文・思想・社会

9.11以降、テロとの闘いという大義名分のもとに、アメリカでは雨後の筍のように機密機関が生まれ、膨大な「最高機密」を扱うプログラムが立ち上げられた。1200を超える政府組織、25万人以上の従業者、そして政府から業務を請け負う民間会社の人員を含めると、じつに85万人以上の人間がなんらかの「最高機密」にアクセスしているという異常事態となっている。無数の最高機密に覆われ、ジャングルのごとき迷宮と化したアメリカの現実を、ワシントンポストのベテラン記者らが精緻な取材によって暴き出す。

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(無題)

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2.8 2018年01月27日

安倍政権下で特定秘密保護法が成立しました。私には詳しいことはわかりませんが、何やら国家権力が強化されて国民は国家の監視下におかれているような感じです。声高に反対と叫ぶより、こんな直感に基づいた市井の庶民の一声が案外本質を突いていることが多いようです。これから日本のインテリジェンスはどうなって行くのか、アメリカの属国と言ってもよいこの国の行く末は、アメリカの現状を見るだけで十分でしょう。そんな私たちの期待に応える本書は、無数の最高機密に覆われ情報の迷宮と化した米国社会の現実を、丹念な取材で暴き出した調査報道の労作であります。 本書によりますと9・11以降、米国ではテロとの戦争という大義名分の下、膨大な量の情報が最高機密指定されるようになったそうです。しかもそれらのオベレーションには議会のチェックもまったく及ばないのです。本書では、非常にショッキングな事柄が淡々と記述されています。上下両院の公聴会に呼ばれたCIA対テロセンター所長はこう言い放ちました。「9・11ののち、グローブは外されたのです。素手の殴り合い、すなわち本格的な殺し合いになります。あなた方が知る必要があるのはそれだけです」と。インテリジェンスに関わる情報はホワイハウスとCIAが知っていればいい、国民は黙って従え、ということですね。民主主義を否定する暴言ですが、国家の中枢、官僚組織ではこんな意識がテロとの戦いの錦の旗の元、自己増殖してしまうんですね。さらに驚くことには、無人偵察戦闘機を使って、イエメンの砂漠を走っていた車をミサイル攻撃し、乗っていた男たちを殺害した事実です。これは暗殺に他ならず、テロリストとなんら変わることがありません。また、本書ではテロ対策の名目の元、膨大な施設、人員、予算を使って世界中に盗聴・監視の網を張り巡らしている実態が明らかにされています。米国ではテロとの闘いという大義名分の下、膨大な量の情報が正当な理由もなく最高機密指定されるようになりました。「テロとの戦い」といえば、なんでも秘密にできるのです。「何が秘密か?」と問われたら「それは秘密だ」と答えればいい、こんな笑い話のような話が堂々とまかり通っているのです。こうして1200を超える政府組織が新たに誕生し、25万人以上がその組織で働いています。さらに、政府から業務を請け負う民間会社の人員を含めると「最高機密」に関与する人員は85万人に達するといいます。 ピュリツァー賞を2度受賞した辣腕記者と、ベテラン軍事アナリストがタッグを組み、その実態に切り込みました。数百人の関係者への取材、百おカ所以上の施設への視察、数十万件の文書や記録の収集など、2年半に及ぶ徹底した取材には舌を巻く思いです。

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