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昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか
大塚ひかり
2015年3月17日
草思社
1,650円(税込)
人文・思想・社会
昔の老人はやばかった!七十過ぎても“婚活”!姥捨て山に捨てられても、みごと生還!極楽往生したくて、井戸にダイブ!『舌切り雀』『浦島太郎』『源氏物語』…などの昔話や古典文学に描かれた「老人像」を追い、「昔の老人の知られざる生態」に迫るユニークな本!
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(無題)
その答えの第一は、当時社会的地位が低かった老人が、長い人生を経た老人ならではの知恵で成功を収めると言う「ギャップの面白さ」「逆転の面白さ」からです。第二は「老人そのものが持つ物語性」です。つまり老人はキャラクターが立っているんです。人が持つ善悪、二面性という真理を語るにふさわしいと言う事もあります。そして三つ目には、昔話の語り手が老人だったという事も関係します。 これだけの事を語るのであれば、一冊の書物に仕上げるのは不可能です。本書の実体は、そんなところにはありません。実は古典文学を通して古代・中世の老人像に迫ろうという意欲作なのです。 私などは、滝の水がお酒になったという親孝行を勧める養老の滝伝説を聞かされて育った世代ですので、本書に描かれた老人の実体には驚かされます。長幼の序などの儒教精神が社会に浸透したのは、江戸期以降からですから、それ以前の社会では、生産活動を卒業して老醜をさらけ出す老人を嘲笑し、あからさまに邪魔者扱いしているんですね。 もうひとつショッキングだったは、婚姻率の低さですね。現代では生涯未婚率が男性で約20%との発表があった時には驚いたものでしたが、当時は男女とも半数が未婚で、その主な要因は貧困だというのですから辛いものがあります。もっとも、平安時代にあっては、男が3日通ってくれば婚姻成立、半年も顔を出さなければ離婚だったのだそうですので、婚姻といってもゆる~い関係ですね。そのゆるさは、性においても言えるんですね。 「不倫文学」である「源氏物語」が古典文学の最高峰としてもてはやされ、弥次さん喜多さんというゲイ・カップルによる下ネタ・セクハラ満載の旅行文学(東海道中膝栗毛)が前近代を通して最大のベストセラーになっている国が日本なのだと語っている辺りが、本書中最も白眉かもしれません。
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