21世紀の道徳

学問、功利主義、ジェンダー、幸福を考える

犀の教室

ベンジャミン・クリッツァー

2021年12月3日

晶文社

1,980円(税込)

人文・思想・社会

現代哲学を「政治的正しさ」の呪縛から解放する快著 ──帯文・東浩紀 ポリティカル・コレクトネス、差別、格差、ジェンダー、動物の権利……いま私たちが直面している様々な問題について考えるとき、カギを握るのは「道徳」。進化心理学をはじめとする最新の学問の知見と、古典的な思想家たちの議論をミックスした、未来志向とアナクロニズムが併存したあたらしい道徳論。「学問の意義」「功利主義」「ジェンダー論」「幸福論」の4つのカテゴリーで構成する、進化論を軸にしたこれからの倫理学。 哲学といえば、「答えの出ない問いに悩み続けることだ」と言われることもある。だが、わたしはそうは思わない。悩み続けることなんて学問ではないし、答えを出せない思考なんて意味がない。哲学的思考とは、わたしたちを悩ませる物事についてなんらかのかたちで正解を出すことのできる考え方なのだ。(…) この本のなかでは、常識はずれな主張も、常識通りの主張も、おおむね同じような考え方から導きだされている。それは、なんらかの事実についてのできるだけ正しい知識に基づきながら、ものごとの意味や価値について論理的に思考することだ。これこそが、わたしにとっての「哲学的思考」である。(…)倫理学のおもしろさ、そして心理学をはじめとする様々な学問のおもしろさをひとりでも多くの読者に伝えることが、この本の最大の目的である。(「まえがき」より) 【目次】 ■第1部 現代における学問的知見のあり方 第1章 リベラルだからこそ「進化論」から目を逸らしてはいけない 第2章 人文学は何の役に立つのか? 第3章 なぜ動物を傷つけることは「差別」であるのか? ■第2部 功利主義 第4章 「権利」という言葉は使わないほうがいいかもしれない 第5章 「トロッコ問題」について考えなければいけない理由 第6章 マザー・テレサの「名言」と効果的な利他主義 ■第3部 ジェンダー論 第7章 フェミニズムは「男性問題」を語れるか? 第8章 「ケア」や「共感」を道徳の基盤とすることはできるのか? 第9章 ロマンティック・ラブを擁護する ■第4部 幸福論 第10章 ストア哲学の幸福論は現代にも通じるのか? 第11章 快楽だけでは幸福にたどりつけない理由 第12章 仕事は禍いの根源なのか、それとも幸福の源泉なのか? 終章 黄金律と「輪の拡大」、道徳的フリン効果と物語的想像力

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Ida Kazuya

京都生まれ・育ちのアメリカンが現代日本に表明する道徳的態度

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3.8 2023年04月06日

著者:ベンジャミン・クリッツァーは京都生まれ京都育ちのアメリカ人。僕が京都を離れた1989年生まれの、僕とは20才以上離れた“若者”が様々なカテゴリーで、アカデミックにではなく『自分はこう考えてる、ここに矛盾を感じてる』という自らの道徳的態度を表明した本でした。こういう本が、刊行間もなく増刷が決まり、我が書店でも(この系統の本には珍しく)目に見えるように減っていくのはとても素晴らしい事だと思う。 現代日本における判断の“軸”を、道徳的・哲学的にこう考える!と、学問の意義/功利主義/ジェンダー論/幸福論という四部構成で書いてるが、その中の章も多種多様。それぞれの章でそれこそ“リベラル”とか“動物倫理”、“トロッコ問題”“フェミニズム”“ケア・共感”“恋愛論”“ストア派”など結構バラバラなテーマでパーツを成し、それらが集まって部になんとなく集約、そして彼の『態度』を示している。 コレを読んで納得するとか共感するとかでなく、自分ならどう考えるか?(どう軸をつくるか?)という自分の思考(態度の表明)の整理を始めるキッカケになるような本でした。 ひとつ、共感というか”あぁ良かった”と思えた点は、『世界は(それでも昔と比べて)少しづつ良くなってる』というメッセージが自分でも腑に落ちたこと…。完璧ではないけど、(我々の”選択”の連続により)より良い社会が形成されていってるのであれば、他人・他生物の事を自らの事のように考える“想像力”を、これからも働かせ続けなければ!と思いました。

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