パパラギ

はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集

SB文庫

ツイアビ / エーリッヒ・ショイルマン

2009年2月28日

SBクリエイティブ

660円(税込)

人文・思想・社会 / 文庫

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Readeeユーザー

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3.7 2018年01月28日

本書の初版は1920年である。第一次世界大戦が終結してわずか2年目、当時のヨーロッパ人にとって「これ以上凄惨な戦いはなかった」と感じられた大戦直後である。精神的、物質的な破局のなかでやっと生きながらえた人びとにとっては「パパラギ」の世界観が心の大きな支えになったに違いない。 「パパラギ」サモア語で、空を打ち破って来た人、という意味だという。その昔、帆船に乗った宣教師がヨーロッパ人としてはじめてサモアにやって来た。サモア人は遠くからその白い帆を見て、空にあいた穴だと思い、その穴を通ってヨーロッパ人がサモアの島々にやって来ると信じた。パパラギとは「空を破って現われた人」現代文明人のことなのである。 南海サモアの酋長ツイアビが、初めてパパラギたちの社会に触れたときの驚きを、島の人々に語って聞かせる演説集である。その内容は、深い洞察と知恵、痛烈な警告と啓示に満ちた文明批評として、今なお輝きを失っていない。 酋長ツイアビの心と言葉を翻訳したというより、この本の著者ショイルマンは、20世紀のはじめ、今の科学技術文明の進歩に比べればまるで玩具にすぎないような当時のヨーロッパ社会から、ツイアビの言葉を通して現代を予見した。その洞察の鋭さ、本当の人間の姿を求めてやまなかった彼の心の潔癖さは、工業社会のスモッグに覆われて失われた視界を晴れやかに澄み渡らせるとともに、金融資本主義によって捻じ曲げられた価値観に疑念を抱かせる強靭さをも持っている。 酋長ツイアビに原発を語らせたら何と言うのかと想像するだけで、ユーモアに触れる喜びに溢れてしまう。なお、本書には絵本版もあったはずである。子供に聞き聞かせても良いだろう。

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