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(無題)
本書はNHKの朝ドラ「あさが来た」のモデル広岡浅子の生涯を描いたものである。ドラマの視聴率も好調のようである。明治初期といえば、まだまだ封建社会の名残りが多く残る中で時代の雰囲気を突き抜けた、あさの明るく破天荒な生き方にユーモアと一種の爽快さを感じているからかもしれない。 この時代、女性の人権は著しく制限を受けていた。女性には参政権は勿論なく、社会通念上も「良妻賢母」であることが強いられた。そのための習い事は許されたが、いわゆる学問は不要のものとされた。 「家」が何より大切で「家」を継続・発展させることに最大の価値が置かれていた時代であった。女性が社会でどのように位置付けられていたかを端的に表現する言葉に「三従七去」がある。当時女性に求められたのは「家に在(あ)りては父に従い、人に適(とつ)ぎては夫に従い、夫死しては子に従う」と、女性は男の従属物であり、女性の自主性を全く否定するものであった。また、七去とは妻を離縁してよいとされた七つの理由であった。即ち父母に従順でないこと、淫乱なこと、嫉妬すること、悪病のあること、子のないこと、おしゃべりなこと、盗みをすること、である。さらに妻には貞淑が求められたが、夫である男は「遊びは男の甲斐性」と性に対するダブルスタンダードが存在した。 広岡浅子は明治を代表する女性実業家である。従順であることが最大の美徳であった社会で実業家として実績を残すには、男どもに脱帽させるほどの飛び抜けた英明さがなければならないし、男どもにに愛される愛嬌も兼ね備えていなければならないだろう。「一代の女傑」と称されたようであるが、底知れぬ妖怪じみていては、実業界での成功はおぼつかないだろう。キットお侠であっけらカランとしていて、何時でも一生懸命だったのではなかろうか。そして、一部の社会活動家のように声高に自己主張しないところが、彼女の最大の魅力だったのではなかろうか。
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