
こころの診療雑記
精神科医の聴心記
浅野弘毅
2016年7月25日
批評社
1,980円(税込)
美容・暮らし・健康・料理
かつて呉秀三が「我邦十何万ノ精神病者ハ実ニ此病ヲ受ケタルノ不幸ノ外ニ、此邦ニ生マレタルノ不幸ヲ重ヌルモノト云フベシ」と嘆いた精神障害者への惨憺たる処遇に始まる近代日本の精神医療の前史をふまえて、1971年から45年間の長きにわたってひたすら精神医療と精神医療改革に心身ともにささげ続けたひとりの精神科医の聴心記。 人は誰でも日々の生活のなかで、こころの隙間に風を感じる、同一性を保てないと感じることは誰でも経験することではないだろうか。 早すぎる老成、不登校、子どものストレス、断食、拒食と過食といった思春期の危機を乗り越え、成人期から働き盛りの中年期へ。 この時期はこころの病に事欠かないほどあらゆる症状が待ち受けている。インターネット依存症、PTSD、脅迫神経症、不眠症、恐怖症、うつ病、統合失調症といったように、ほとんどの人が何らかの症状を経験することになる。 世の中のしがらみのなかで、自分の生を生き抜きながら、家族とともに生活を維持して行くことに疲れてしまうときもあるのではないだろうか。 家族のホメオスターシス(生体の恒常性維持機能)とは、家族が直面している問題について互いにはっきりと話合う中で解決の方向を見出す家族療法だが、女性にライフサイクルの危機が訪れるのもこの時期で、空の巣症候群という子どもたちが成人した後の埋め難い喪失感や空虚感に満ちている。 老化を意識する初老から高齢者へ、そして定年。目標を見失い、居場所を失って、こころの老化が始まり、心気、不安、妄想、うつ、強迫、せん妄、そして認知症もどきから認知症へ。 こころの病は、子どもから高齢者までさまざまな形で現れながら消失してゆくケースもあれば重篤になってしまうケースもある。しかし、個々の事例から窺い知ることができるこころの診療雑記をとおして見えてくるものは、心のリカバリーーー現実を受け入れて新たな人生の再出発をーー試みることではないだろうか。
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