江戸無血開城、通説を覆す
一枚の絵に隠された”謎”を読み解く
山本紀久雄
2021年12月31日
ベストブック
1,650円(税込)
人文・思想・社会
明治神宮外苑に建つ聖徳記念絵画館に、結城素明の壁画『江戸開城談判』が展示されており、これは中学教科書にも掲載され、いわば「正史」としての取り扱いを受けている。この壁画『江戸開城談判』は、慶応4年(1868)3月14日、江戸薩摩藩邸において、西郷隆盛と勝海舟の「談判」によって、江戸城が無血開城されたことを表現している。山岡鉄舟を研究している者として、この壁画のタイトルの「談判」という言葉に対して、かねてより疑問を持っていた。それは、慶応4年3月14日を遡る3月9日、山岡鉄舟は徳川慶喜から直命を受け、官軍の参謀・西郷隆盛と「談判」し、慶喜の命を保証させ、江戸開城条件提示を受けたのであるから、この3月9日時点で江戸無血開城は実質的に決まったのではないかという観点からである。では、慶応4年3月14日の江戸薩摩藩邸における西郷と海舟の二人を、結城素明が「談判」壁画として描いたのは、何を意味しているのであろうか。
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