恋・海・スパイ

ホテルの部屋のドアを開けた瞬間、アビゲイル・スチュワートは驚きのあまり立ちすくんだ。二人の男が荷物をかきまわしている。部屋を出た彼女は夕方の町に逃げだした。しかし男たちは執拗に追ってくるーただの強盗じゃないわ。知り合いに勧められてこのベルデ島へ休暇を過ごしにきたけれど、どうやらトラブルに巻き込まれてしまったらしい。途方にくれたアビゲイルは、昼間食事をした店の夫婦を頼った。そこで元ＦＢＩのデイビッド・ブレインを訪れるように言われ、港で彼の船に乗ったとたん、エンジンがかかって動きだす。待ちかねたガールフレンドの到着だと思い込んだブレインの頭の中は、月明かりのデッキ、冷えたワイン、ブロンド美人の姿しかない。しばらくして勘違いに気づいた彼は猛烈に怒りだした。暗がりで一瞬彼女の裸身を想像したのも忘れてしまったように。