泳ぐのに、安全でも適切でもありません

江國香織

2002年3月31日

集英社

1,430円(税込)

小説・エッセイ

いろんな生活、いろんな人生、いろんな人々。とりどりで、不可解で。江国香織初の書き下ろし短編小説。

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Readeeユーザー

(無題)

-- 2018年01月19日

人には様々な生き方がある。例えば安全で適切な生き方に背を向け、ヒモのような暮らしを続けるロクでもない男の身体に溺れる女。例えば、食べることとセックスにのみ価値を置く男女。 誰しもが憧れる海辺の家での暮らし。しかし、一度住んでみれば、砂は入ってくるし、潮風で鉄部の腐食はどこよりも早い。その女は、窓も戸も開けっ放しで砂だらけの家のように建っていた。壊れるまでいつまでも。30そこそこでその女は、すでに終わっていた。だから、現実の生活には、全く手応えを感じられなかった。唯一生き生きとするのは、酒を呑んでいる時と音楽が流れている時だけであった。 子育てに小康状態を得た主婦が優雅にランチを楽しんだり、カラオケやボーリング、テニスに興じる姿は日常的に見られる。女子会と称することで免罪符を手に入れることができるような、最近の風潮を著者は「崩壊の過程」と冷徹な視線を投げかける。 本書にはこんな風に10人の女が登場する。10人が10人とも個性的なのだが、ひとつだけ共通する。それは男は絶対に理解出来ない女だけの肌感覚を濃厚に漂わせていることだ。 そして、人生の大河を安全かつ適切に泳ぎきるために身に付けておくべき価値観、即ち富や社会的地位、さらには社会貢献などからは程遠いところに価値を見出している作者の姿を垣間見ることができる。それは愉楽である。そう、本書は愉楽を人生で最も大事にする女の物語集である。

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