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(無題)
ソマリアで事実上の無政府状態が続いている事は、皆さんよくご存知の通りです。その一方で、分離独立を宣言した北部の旧英領ソマリランド地域では平和が保たれ、選挙による政権交代まで起きているという事実は、ほとんど知られていません。破綻した国家の内側に安定した民主主義国家が存在するというのは、どういうことなのでしょうか。興味をそそられるものの、信頼できる情報に乏しく、何ともよくわからないのが実態でした。そんなところに、人一倍旺盛な好奇心と冒険心を兼ね備えた高野秀行が立ち向かえば、質の高いドキュメントが産まれるのも当たり前というものです。 ソマリランドの事を調べれば調べるほど分からなくなってくるとすれば、「現地に行って直接確かめよう」と考えるのが冒険家の常ですが、さて、行ってみるにしてもどうしたら行けるのか、直行便などあるはずもないから、エチオピアにまず向かい、そこで入国の機会をうかがうという試行錯誤の連続です。こうして、地球上でも最も危険な地域であるソマリアに、何故平和な独立国家が存在しているのか、その謎を探求する旅がはじまります。著者はソマリランドを訪問し、その地域の人々や文化に触れながら、その秘密が氏族による統治にあることが明かされていきます。民主主義や国民国家と言った人類の財産は、西欧合理主義の最大の成果と考えられてきましたが、血族によるガバナンスという圧倒的現実の前では全く無力と化してしまいます。ことに南部ソマリヤでは民主主義実現に膨大な時間と財を投じても、絶望しか手に入れることができなかった事と対比させると、そこにある全く違った原理に原始的な力強いを感じます。 と、まあここまでが第一次のソマリランド行きの内容ですが、著者はこの二年後に再び訪れているんですね。それも、今度は最も危険な南部ソマリアと海賊国家プントランドにも足を踏み入れます。多彩なエピソードと非常に優れた観察眼、客観的な立場から、ユーモアを交えて進んでいく文章は卓越しています。現地の人々の中に飛び込んで本音の情報を引き出すのは、著者の人柄によるところが大きいのですが、読んでいるとどうも、もう一つの武器がありそうです。それはカートです。ソマリアはムスリムですので、飲酒は厳禁で、それは外国人が宿泊するホテルにまで徹底されているほど厳格です。反面、覚醒作用のある木の葉カートは合法で、我々の飲酒以上に日常的です。著者はこのカートを事あるごとに現地の人々と食べ、生の情報を引き出して来るのです。このようにして著者が体当たりでつかんだ生の情報と観察眼は、本書のもうひとつの大きな成果である事実関係がぐしゃぐしゃに入り込んで分からなくなっているソマリア情勢を解きほぐし、日本史の登場人物になぞらえて分かり易く解説してくれます。
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toruo
(無題)
ソマリアというと海賊に泥沼の内戦、というイメージだが実は三国志じゃないけど大きく三つに分かれており、上からソマリランド、プントランド、ソマリアと名乗っているのだとか。ご多聞に漏れず氏族のくくりで分かれているのだけどもそのうちのソマリランドが実は内戦も無く民主主義が機能し曲がりなりにも平和を維持しているのだという。 そこに興味を持って現地に飛んだ作者のルポタージュは必要以上に硬く無く〜一緒に麻薬をやったりする〜読みやすく分かりやすい。 しかし内戦真っ只中の旧首都モガディシオやら海賊国家にまで行くバイタリティには感心する。いや、面白かった!
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