融けるデザイン

ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論

渡邊恵太

2015年1月31日

ビー・エヌ・エヌ新社

2,640円(税込)

科学・技術

テクノロジーの進歩によりますます変容する世界を捉え、デザインしていくためには?これからのものづくりのための最重要キーワード「自己帰属感」を軸に、情報を中心とした設計の発想手法を解き明かす。UX、IoTの本質を掴みたい人へ。

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Readeeユーザー

(無題)

starstarstarstar 4.0 2021年08月15日

UX(User Experience )デザインとはなにか、今後インターフェイスはどのように設計されるべきなのか、論じた本。 iPhoneはただかっこいいだけではなく、ユーザーにとっての使いやすさ(使っている、という感覚がなくなるくらいの自然さ)を徹底的に重視している、という説明はとてもしっくりきた。(表現はうろ覚え) デザインの本質はその見た目ではなく、体験にあるのだということだ。 「道具の透明性」:道具を利用している最中にそれ自体を意識しないで済む状態、あるいは意識しなくなる現象のこと。 たとえばハンマーは、手に持つとそれ自体を意識せずに、釘を打つこと(対象)に集中できる。 エンタメに通ずるなと思った箇所があるので抜粋しておく。↓ ●筆者が2008年に開発したCastOven:電子レンジの温め(調理)時間を利用して、ウェブ上にある動画コンテンツ(Youtube)を閲覧可能にするシステム ユーザーが温め時間を設定して調理を開始すると、その時間の長さに合わせた動画が電子レンジの全面にあるディスプレイで再生される。温め時間と同じ長さの動画が再生されるため、動画終了と同時に温めも終了するという仕組み。 →生活の流れを止めずにコンテンツを消費、生活の流れの中でコンテンツとの接点をつくる たとえば他には、電車の乗り換え案内サービスに表示される時間部分にその時間ぴったりのコンテンツを提示するという方法も考えられる。 ーーーーーーー p.170-174  AppleのiPodやiPod touchなどにより、映像を何本も持ち歩くことが可能となったが、2時間の映画を東京のような交通網で観るチャンスはなかなかない。たとえば新宿駅から東京駅までの乗車時間は19分であるが、19分あるから映画を見始めようと思うだろうか。乗り換えが続いて、たとえば山梨へ移動するのであれば見始めるかもしれないが、19分しかない状態で2時間の映画を見始めようとはなかなか思わないのが実際だろう。  しかし逆に、19分で東京駅に着くタイミングで見終わるコンテンツが提案されれば、「見ようかな」とは思えるはずだ。もちろんここで重要なのは、絶対に見たい、絶対に見たくないというユーザー層を相手にするのではなく、少し暇で何かしてもいいかなというユーザー層である。電車の中吊り広告などもまた、そういうユーザー層にリーチするものだろう。電車の移動という、ユーザー自らが時間を制御できない状況において情報を見えるようにしておくことで、ユーザー自身が興味あろうとなかろうと、時間があるがゆえになんとなく見てしまうことを狙った広告だ。  この現象は、友人などとの待ち合わせで少し早めに待ち合わせ場所に着いた場合や、コンビニや本屋で立ち読みをするような状況にも似ている。そういった状況は、人が来るまでの時間をどうにかすることに対して優先度が高く、本来目的があってコンビニや本屋に行くのとはまったく異なる。電車にしても待ち合わせで待つ場合にしても、人は制御できない余暇時間を持つと、興味が高くない情報であっても自らそれを見ることを選択することがある。情報の価値は文脈によって高まったり下がったりもする。つまりどんなに面白いコンテンツであっても、時間がなければ情報の価値(優先度)は下がってしまうのだ。 あらゆるコンテンツがデジタル化され、かつインターネット上に共有され、スマートフォンなどでいつでもどこでもコンテンツを見られる状態になった。その一方で、いつどこでどのようにそういったコンテンツを見るのかも問題になってきた。好きなときに見られるからいいじゃないかと思うかもしれない。しかしそれはモチベーションが高い人だけである。  (中略)  特に、関わる時間が長いコンテンツにユーザーは躊躇してしまうことがある。筆者はこれを「時間の使いにくさ」と呼んでいる。道具の使いやすさ/使いにくさはヒューマンインターフェース研究であるが、コンテンツや道具などの利用に関わる時間にも、同様に使いやすさ/使いにくさがあるのだ。  たとえば大作のゲームの代表として『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』があるが、あるゲーム紹介サイトで「今作はクリアするのに60時間かかり、たっぷり遊べる」との内容の記事が掲載されたところ、それに対してウェブ上の掲示板ではユーザーたちが、「60時間は長すぎる」「割に合わない」「60時間とかありえない。そんな時間をかけたらどんな資格だって取れるのではないか」などといった、時間の長さについての議論を展開していた。これが興味深いのは、ゲームの内容ではなくクリアするのにかかる時間もユーザーは気にするということだ。しかもそんな大作ゲームがひとつではなく存在している。しかし当然、ユーザーの時間は限られている。だから、大作で、「やれば」面白いものなのだとしても、そしてお金があったとしてどんなゲームでも買えたとしても、クリアにかかる時間が長いことによって、ユーザーはやることを躊躇したり覚悟を要求することがあるということだ。これが、時間の使いにくさである。  (中略)  このように、今日さまざまな道具やコンテンツは「ユーザーの時間を奪う」。つまり、利便性に伴う拘束性があるのだ。道具やサービスを利用することは、多かれ少なかれそのプロダクトのタイムマネジメントの下に人が入ることになる。そしてユーザーは、魅力的なコンテンツや便利なサービスであっても、躊躇したり、覚悟したり、あるいは「使わない」「使いにくい」と判断する。 p.181  (中略)  「あなたのサービスはユーザーの生活のごく一部でしかない」ことを肝に銘じながら設計することが重要だ。ライバルは他のサービスやアプリケーションだけではない。人々の朝食時間や入浴時間、睡眠時間ですらあなたのサービスのライバルであり、同時にうまく共生していかなければならない巨大なプラットフォームなのだ。だから、「融けるデザイン」が必要なのである。

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Readeeユーザー

すばらしい

starstarstarstar
star
4.3 2020年07月16日

現代におけるデザインという思考方のフレームを与えてくれる。素晴らしい。まさにハードとソフトが融けあい、体験を主軸にデザインが設計されている現況、未来を提示している。

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