作家と一日
翼の王国books
吉田 修一
2015年10月30日
木楽舎
1,320円(税込)
小説・エッセイ
ポルトガルのビーチでパトカーに乗り、新宿ゴールデン街でヘヴィメタバンドと意気投合し、仕事場で猫と戯れる…これが『悪人』の素顔です。ANAグループ機内誌『翼の王国』の人気連載「空の冒険」2年分のエピソードを収録した著者初のエッセイ集。
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(無題)
エッセイのレビューほどむづかしいものはない、と思っているので普段からエッセイはなるべく読まないようにしている。しかし、この本の表紙に惹かれてしまった。吉田修一のポートレイトイラストがあしらわれているのだ。あの「悪人」を書いた吉田修一がどんな人物なのか、ついつい興味に負けて読み始めてしまった。 本書はANAの機内誌「翼の王国」に連載されたエッセイを収録したものだそうだ。となれば、内容は旅に関連したエッセイと誰もが予想する。非売雑誌と旅に関わるエッセイとなれば、ダイナースクラブが発行するSIGNATUREに連載していた伊集院静のエッセイを思い浮かべるのは、僕ばかりではないだろう。事実、読んでみると肌触りが実によく似ているのである。伊集院静を少し小ぶりにした感じかな。本書にも「パリで伊集院静を真似る」と題する一文が収録されており、伊集院静を兄貴分みたいに尊敬しているようだ。 さて、著者の吉田に言わせればこの本は「平和な国に暮らす作家が平和な国を飛び回って書いたエッセイ」なのだそうだ。長い人生が一日一日を積み重ねた結果であるなら、毎日を愉快に過ごす、極上の暇つぶしを楽しむ事が大事な事と考える人生観が文章のそこここに垣間見える。愉楽を大事にする人であれば、共感をもって読めるエッセイといえよう。
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