〔電子〕昔、火星のあった場所

北野勇作

2018年8月1日

惑星と口笛ブックス

800円(税込)

小説・エッセイ

SFやファンタジーを中心に、独自の道を切り開く北野勇作の長編第一作にして、第四回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。待望の電子書籍化。 はたしてここは地球なのか、火星なのか。そんなことすらわからなくなってしまったこの場所。入社三か月足らずの「ぼく」はある日、会社の上層部に呼びだされる。そして、ある任務を言い渡される。それは失踪した元同期の社員を排除する仕事だった。同期は会社を恨み「鬼」になったのだった。 不確定性が渦巻く世界、頻出する古の地球の民譚のキャラクター、オニ、タヌキ、猿と蟹。世界の成立をめぐる謎。その謎を解き、世界を安定させようとするAI「小春」。混在する時間、眠る宇宙飛行士たち。「門」とは何か? まっすぐこの世界めがけて突き進んでくるものとは何か? 桃太郎はいったい誰なのか?「ぼく」ははたして自分を、そして世界を混沌から救うことができるのか。不確定の泥船のようなこの世界を。 プラットホームは、端から崩れはじめていた。速度を増しながらーー。 ぼくは、ドアの前に立って、ぼんやりそれをながめている。 さっきからずっと、どしゃぶりの雨のような音がぼくを包みこんでいた。いや、なにも映していないテレビの音なのかも知れない。 「なにしてるんだ、早く乗れよ」 船が地面をこする音が大きくなってくる。ぼくには、それがこの世界のあげる悲鳴のようにも聞こえるのだ。 「この世界は、壊れてしまうのか。この場所は、もう」 そんな、今となってはあたりまえのようなことをぼくはようやく口にする。 ホームの屋根がたわみ、その負荷に耐えられない部分から崩れようとしていた。 「そうだよ。あの船を停止させるための制動媒体だ。この世界は、クッションのかわりに使われるのさ」 高まるノイズのなかで、時計屋は叫んだ。 惑星と口笛ブックス版あとがきつき。〈ブックス・ファンタスティック〉シリーズ第一作。

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